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・・・・・
辺りが夜の帳に包まれる。そろそろ大佐が帰ってくる時間だ。
王子様はその時を今か今かと待ちわびていた。
窓の外を見ると昼間の雨はすっかり止んで、空には薄い雲の隙間に美しい星ぼしが輝いていた。
そのうちにヘッドライトを灯した車が敷地に入ってくると「あ!」と叫ぶなり猛ダッシュでエントランスまで走っていった。
大佐の姿を見つけると大喜びで両手を振る。
「ソウゲツー!」
「やあ、ただいま......こらこら、そんなに走ったら危ないぞ」
「えへへっ、お帰りなさーい!」
広げた腕の中に一直線に飛び込んでくる少年に面食らいつつも、大佐は「よしよし」と小さな背中を撫でてやる。
王子様は嬉しそうにニッコリ笑うと「自分が持つから」と言って大佐の手からビジネスバッグを横取りした。
そのまま早く行きたそうにクイクイと袖を引く。
この様子に大佐は首を傾げた。
「今夜はやけにご機嫌じゃないか。何かいいことでもあったのかい?」
「いいこと? んー? べつにー?」
「あったんだな」
「ねえ、そんなことよりお風呂にする? それともご飯?」
「先に風呂......って! やっぱり変だぞ王子様。何があったのか言いなさい」
「何にもないったら。これくらい奥さんとしてジョーシキだもん!」
そんなことを言いながら少年は得意気に鼻を膨らませている。
「(やれやれ、まるでオママゴトだな)」
大佐は肩をすくめた。
何に影響されたのか知らないが別に害があるわけではないし、何よりこの子が楽しそうにやってるのだから、まあいいか。
そう思い直すと大佐は少年に手を引かれるままに屋敷の中へと入っていった。
*****
二人で夕食を済ませ、デザートのアイスクリームを食べる頃――。
さっきまでの威勢はどこへやら。
王子様はテーブルでの会話も上の空に、すっかりしおらしくなっていた。
「(うまくできるかな......)」
あんなに喜び勇んでいたというのに、いざベッドの時間が近づいてくるとだんだん不安になってきたのだ。
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