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「そんな訳ないか......」
水面は依然として穏やかで、キラキラと静かに輝いている。そこから不吉な予感は感じなかった。
「もしやこの中に」という最悪の想像は取り下げようか......。
「しかし……」
万一ということがある。
こうして考えあぐねている間にも、溺れたあの子が助けを待っているのかもしれないのだ。
それならば事態は一刻を争うぞ。
大佐は藁にもすがる思いで浜辺に鎮座する大岩によじ登る。手びさしを作ると、そこから見える大海原を丹念に調べあげた。
すると。
「おや?」
何やら2時の方向が騒がしい。
あれはカツオドリの群れだろうか?
そう考えている間にも鳥たちは羽を広げて集まってきては、ある一点をターゲットにぐるぐると怪しい旋回をみせはじめたではないか。
どうやら獲物を狙っているようだ。
大佐は水面にじっと目を凝らす。
すると、赤い何かが浮き沈みを繰り返しているのがハッキリと分かった。
あの色は……!
「リオーーーーっ!!」
ぐずぐずしている暇はなかった。
上着と靴を放り投げると懐の拳銃を手にしてざんぶと海に飛びこんでいく。
「失せろ鳥どもめっ! ちょっとでもその子をつついてみろ? コンバットマグナム38口径が火を噴くぞっ!!!」
*****
「え、ソウゲツ……何やってるんだ……?」
その頃――。
王子様はもちろん溺れてなどいなかった。
それどころか優雅にキャンディを舐めながら岩場にしゃがみ込み、水溜まりに取り残された生き物を観察していたのだ。
そこへ突然上った奇声に「なんだ?」と振り返ってみれば半狂乱で沖に前進していく我が主人を見つけてしまい、それはもうビックリした。
どうしてこんなことになっているのか分からなかったが、しきりに「リオ、リオ」と叫ぶ彼の声から、おそらく自分を探して海まで入っていったのだろうと推測できる。
あんなに取り乱した彼は初めて見た。
いつもクールで、正しい人なのに……。
「うふふっ……! ソウったら」
彼には悪いが何だかとても可笑しく思えて、王子様はついつい声を上げて笑ってしまった。
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