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やがて、ひと通りの騒動を終えたのち――。
大佐は全身に青い塩水をしたたらせたまま、のしのしと波打ち際まで帰ってきた。
流れるような自慢の黒髪も、颯爽としたブルーのワイシャツも、今では見る影もない。
その頃には全てを理解していた彼は、すこぶる決まり悪そうな面持ちで、こちらにブンブンと手を振っている王子の元まで歩み寄る。
「ソウゲツーっ!」
「王子様......」
少年は満面の笑みを浮かべて胸に飛び込んできた。
「こら、濡れるからやめなさい」
「いいんだ、そんなの!」
言いながら嬉しそうに頬ずりをしている。
「僕がいなくなったと思ったの?」
「ああ......」
「身体がびしょ濡れだよ。寒くない?」
「いいや、ちっとも。むしろ暑いぐらいだぜ」
「それなら良かった。だけど沖まで泳いで疲れたでしょ? テントで少し休もうよ」
「......」
大佐は王子様の髪をひとつ撫でると力なく微笑んでみせた。
ああ......できるならさっきの醜態は見なかったことにして欲しい。
王子のピンチとみるや否や一気に頭に血がのぼり、馬鹿みたいにひとりで騒いで......いったいどれだけ間抜けだったことか。
もっともっと冷静になるべきだった。
結局、海に浮かんでいた赤い物体の正体は、ロープに魚が引っ掛かった単なるブイだったのだ。
それをこの子の下着と見間違えただなんて、口が裂けても言えやしない。
大佐は岩場に放っていたドレスシューズをつまみ上げると、左右どうしをパンパンと打ち付けはじめた。
後から後から砂が出てくる。
「ははは、カッコ悪いな......。ガッカリしたかい?」
その問いかけに、王子様はニッコリ笑って首を傾げる。
「どうして?」
その小さな両腕には、同じく岩場に打ち捨てられていた大佐の上着がギュッと抱き締められていた――。
*****
シャツとズボンを天日に干すと、二人はテントの中で冷たい麦茶を飲んだ。
そのままのんびりと空を見ながら並んで寝転がる。
「ねえ、ソウゲツ」
「うん」
「えへへっ、さっきはありがとう!」
王子様はトレーナーのポケットに手を突っ込むと、おもむろにそこから何かを取り出した。
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