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あなたはそんな僕の様子を不思議そうな目をして見ていたけれど、すぐに事態に気がついたようで、珍しいことに少しだけ頬を赤らめた。
「や、失礼」
そう言って腰を浮かせると、唇を真一文字に結んで離れていってしまうから、僕はたちまち寂しくなった。
「ソウゲツ、イヤっ」
この後どうするべきかも分からない。
だけど、引き下がれない。僕は必死で彼の腕にすがりついた。
「ねえ、お願いだっ」
だって今、一瞬だけ答えが見えた気がしたんだ。
あと少し勇気を出せば、全てがつながる予感がするのに――……。
「ハア、昼間から面目ない。ちょっと頭を冷やすからな」
だけどあなたはそう言ってテントの入り口を開けてしまった。
とたんに潮を含んだ湿った風が僕達の間を引き裂くようにヒュウウウッと強く吹きつけてきた。
もぉっ、せっかくいい所だったのに!
こうなったらワガママのひとつも言ってやらなきゃ気が済まないよ。
「やだやだやだっ! もう一回キスしてくれなきゃ、僕死んじゃう!」
バタバタと手足を動かし、全身全霊をかけて地団駄を踏んだ。
それなのに。
「ダメだ」
「なんで? どうして?」
思いっきり口を尖らせたけど、あなた遠くの空ばかり気にして、ちっともこちらを見てくれない。
そしていきなりこんなことを言いだした。
「王子様、急いで荷物をまとめるぞ。まもなくこの一帯は大雨に見舞われる!」
「え? あ、雨......?」
ウソー、さっきまであんなに晴れていたのに?
半信半疑で起き上がり、リュックを掴んだまさにその時。
あなたが予報した通り、テントの壁にポツポツと小さな雨音が響きはじめたのだった――。
*****
「ああー、ビックリしたぁ......」
車のホロを整えて、なんとか海を出発する頃には、雨はバケツをひっくり返したようなどしゃ降りになっていた。
あのままワガママ放題甘えていたら、今頃二人でずぶ濡れになっていたのかも......。
「どうした。寒いのか?」
ちょっとだけしょんぼりしている僕を見かねたのか、あなたはエアコンの風を強めると優しく声をかけてきた。
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