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マイ・フェア・プリンス【終章】
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・・・・・
先ほどのやり取りについて、王子様は少なからずショックを受けているようだった。
私としては精一杯心を尽くしたつもりだが、結果的にこの子を傷つけることになったのだ。
想いを寄せる相手に受け入れられない虚しさは身に染みて分かっているから、この子の切なげな目を見るたびに、こちらの胸までズクリと痛む。
ああ、そんな顔をしないでくれよ。
私の本心なんて言うまでもないじゃないか。
手戯を受けて高ぶった気持ちも自覚しているし
君が夕べとは違う何らかの覚悟を決めていることだって分かっている。
だからといって欲望をぶち撒けることなど所詮できはしないから、ここで止めにしたいんだ。
私の理性が働くうちに――。
*****
――しかし夕食の席での王子は散々だった。
さっきまで脱衣所でしょんぼりしていた姿からは想像もつかないバイタリティで思い付く限りのワガママを並べては、大佐やホテルのスタッフを困らせる。
二人のために用意された対面の席が気に入らないからと、大佐の隣に勝手に移動したのは序の口で、目の前に出された子供用のディナーには「バカにしてるのか!」と盛大に文句をつけた。
その割には全てペロリと平らげると、今度は「戦隊ヒーローのショーが見たい」「ぬり絵を持ってこい」などと暴君まがいの図々しさを見せ
挙句の果てには「ソウゲツと同じものを飲むんだ」と声高らかにグラスワインまで追加注文する始末。
これにはさすがの大佐も堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしなさい!!!!」
周囲が凍てつくほどの怒号がレストランに響き渡ると、王子様はピタリと黙った。
突然の保護者の激昂にホテルのスタッフは皆、目を点にする。
大佐はそれには構わずに席を立つと、銀のトレイを持ったままフロアの中央で立ち尽くしているウェイトレスにツカツカと歩み寄った。
右手を伸ばすと、王子が戯れに注文したグラスを受け取り、ググーッと一気に中身をあおる。
それが水であるかのような潔い飲みっぷりに、周囲はまたも驚きの渦に包まれたのだった。
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