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【終章】6
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・・・・・
「(オイオイ、冗談じゃねえよッ......!)」
この事態に最も面食らったのは、他でもないこの男。そう……射的屋の主人である。
さて、あまり大きな声では言えないが、実は祭りの景品の中には絶対に客が手をつけることができない品がいくつか存在している。
それは客寄せのためにいかにもそれらしく置かれているが、そのほとんどが銃の性能の及ばない距離と角度で守られており、的自体も極端に小さく設定されていた。
取られてしまっては店側が大損してしまうからだ。
今回、大佐が射止めたペレのボールはまさしくそれだった。
あれは正真正銘の「本物」だ。
射的屋の主人にしてみれば、間違ってもおいそれと譲れる代物ではない。
やむを得ぬ。かくなる上は――。
*****
「いッ……いっやぁっ~! お見事、お見事~~っ!」
主人は両手を揉み合わせながら薄ら笑いを浮かべて大佐に近づいていった。
「でもスミマセンね、お客さん。アレは特別なんですよ。ホラ、一番上の段に乗っているでしょう? あそこにあるオモチャはただ当てるだけではいけません。何発もこなしてすっかり台から落として頂かないと」
とっさに思いついた方便で難を逃れようというのだろう。
周りの客たちは往生際の悪い主人の言葉に「聞いてないぞコノ野郎!」と口々にブーイングを浴びせかけた。
サッカーボールを納めた頑丈な箱を、頼りないコルクで押し出すことなど不可能に近いではないか。
しかし、大佐は冷静だった。
「なるほど。そういうことか」
「ソウゲツ……残念だ。せっかく取れたと思ったのに」
不安気に目をしばたかせる王子の肩をポンと叩くと、大佐はコルクをつまみ上げた。
「なに、心配するな。少し時間はかかるだろうが何とかする」
「大丈夫かな? なんだかすごく大変そうだけど」
「あれが欲しいんだろう? だったらやるしかない」
そう言うと、今一度床の白線にぴたりと足を揃えた。
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