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【終章】9
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大佐は心の中で勝どきを上げていた。
長かった。しかし、ここまでくればこっちのものだ。
何故なら4つの支点のうち、どこか1つでも奪ってしまえば必然的に構造は弱くなる。椅子と同じだ。
案の定、左側のビスは、ものの100発でその役目を失った。これにより箱はグラリと後方にバランスを崩した。
あとの2つも時間の問題である。
「(王子様......!)」
待っていてくれ。もう少しだ。
もう少しで、ペレのボールは君のもの......!
寸分の狂いもなく右側後方のビスを弾き飛ばすと、大佐は恍惚の表情を浮かべた。
その脳裏には、ボールを抱えたリオが太陽のようにニッコリと笑う姿が映しだされている。
「(ああ、今まで生きてきたのはこのためだ......!)」
そんな境地に至ると、大佐は疲れ知らずの右腕を構えて最後の仕事にとりかかった。
「これで終わりだ!!」
*****
――ついに長いゲームの決着がついた。
大佐は王子の姿を目で探すと、何も言わずにそこに向かって歩いていった。
周りに集まった客達は皆騒然としていたが、大佐が通る道を空けて惜しみ無い拍手を送ってくれた。
しかし、どういう訳か大佐はその手に何も持っていない。
「王子様......」
大佐は爆発寸前の気持ちを押し殺して呟いた。
「申し訳ありません......!」
*****
結局、あの後、私は弾を撃つことができなかった。
射的屋の主人による「とっくに閉店時間を過ぎている」という大義名分のもと、ゲームは強制終了という形で幕を閉じたのだ。
もちろん納得のいく話ではない。他の露店を見ればまだまだ営業真っ盛りだし、ホテル側が予定している祭りの終了時刻まではゆうに1時間もある。
だからといって大の大人がこんな所で騒ぐ訳にもいかないし、何より王子様に無様な姿を見せたくなかった。
今までの努力が水泡に帰した。
沸々と怒りが込み上げてくる。
今度こそはと思っていたのに、どうして自分はいつだってあの人の期待に応えることができないのか。
とにかく謝らなければならない。
あの人はどんな顔で悲しむだろう。
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