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――お正月の日も暮れて、あたりはすでに真っ暗です。
大佐と王子様は川沿いの街道をとぼとぼと歩いて帰路についていました。
先ほどの不穏なムードを引きずりながらも、なぜか二人がピッタリと肩を寄せあっていたのは他でもない。雪が降っていたからです。
番傘はひとつしか持ってきていませんでしたから、こうするのが自然でした。
「(元旦の雪は縁起がいいってソウゲツが言ってたけど、あれは本当だったんだな)」
冷えた身体をこっそりと必要以上に預けながら、王子様はそんなことを考えていました。
こういうことでもなければ、あの生真面目な大佐のことです。きっと遠慮して離れて歩いたに違いありません。
「(さっきはちょっと言い過ぎちゃった。『おあずけ』なんて、まるで犬に命令するみたいに......)」
王子様にも、少し後ろめたい気持ちがありました。
大佐に痛恨のギャグをお見舞いされた時はさすがに涙が出そうになりましたが、考えてみれば彼も必死だったのです。それにお酒も入っていましたし。
王子様は大佐が肩にかけてくれていた黒い羽織をギュッと握りしめました。
何か話したいけれど、どう切り出したらいいのか分かりません。さっきから大佐も黙ったまま、こちらを見てくれないのです。険しい横顔が怒っているようにも見えて、王子様は不安になりました。
すると、今まで右側を歩いていた大佐が番傘を傾けながら左に移動してきました。
王子様がキョトンとしていると「風の向きが変わったんだ」と短く説明してくれました。今までも大きな身体を盾にして守ってくれていたのです。
「ソウゲツは寒くないの?」
そう聞くと、大佐は一瞬ピキリと表情を引きつらせましたが、王子様に他意がないことに気がつくと「なんのこれしき」と言って微笑んでくれました。
どうやら彼は機嫌が悪いわけではなく、ずっと自爆の後遺症を引きずっていたようです。
王子様はそんな繊細な彼の胸中を知ると、不思議と温かな気持ちになってきました。
もっと笑って欲しいなと、素直にそう思えたのです。
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