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生きる意味
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まさかあんな所で会うなんて思ってなかった...
歩に、酷いことした、よな...
自分に対して歩が優しさを見せてくれたのはもちろん分かった
でも新はその優しさに応えることはできなかった
それが歩のためだと思うのはいけないことだろうか
応えても応えなくても、どちらを選んでも歩を傷付けてしまう
それが悠でも、誰でも
もう何が正しいかなんて考えられなかった
できれば、誰にも関わりたくない。考えたくない。
部屋に戻ってきたはいいけど、教室に行く気にもなれない
朝の廉からの行為で、気が滅入ってしまっていた
テストが近いから明日は、行こう...
そう思い、ベッドに身体を倒す
ぼんやりと眺める天井は見慣れた景色で、1人、部屋にいることに心が落ち着く
自分が生きてる意味
さっきは何で自分が生きているのか分からなかったが、思い出したように母親の顔が頭を過る
俺が生きなきゃいけない理由は母さんのためだ
父さんが亡くなって、母さんはずっと一人手で俺を育ててくれた
そんな中で、茂雄さんに出会って、母さんは明るさを取り戻していった気がした
もちろん、いつも俺の前では笑ってくれて、笑顔を絶やさない母さんだったけど、夜中、仏壇の前で泣いてるのを何度も見ていた
無理しないで欲しいって思ってた
茂雄さんとの交際が始まって、嬉しそうにそれを俺に話す母さんに、幸せになって欲しいと心から思った
結婚すると聞いたときは自分の事のように嬉しかった
でも
廉さんはそれをよく思ってなかった
血が繋がっていないのに、俺を廉さんと同じく可愛がってくれた茂雄さんは後継者の候補に俺の名前を挙げた
でも、俺は
後継者がどうとか、次期社長候補だとか、本当にどうでもよかった
だけど廉さんは——
後継者問題から廉さんは、俺への脅しに母さんとの結婚の話を取り消す事だってできると言った
信憑性のない話だと思ってたけど、確信のないそれに俺は抵抗できなかった
母さんには幸せでいてほしい
俺がまだ高校生だから、未成年だから悪いんだ
卒業して、自立すれば、廉さんからの暴力は無くなる
後継者がどうとかって問題も解決する
今は俺が耐えればいいんだ
あと2年くらいの孤独くらい、どうってことない....
俺が生きてるのは、母さんのため
母さんのために生きなきゃいけないんだ...
言い聞かせるように唱える
だけど思考とは裏腹に、涙が込み上げる
あれ、なんで....
本心じゃないから、
なんて、分かり切ってる
でもそうして自分を丸め込まないと、自分が壊れてしまうような気がした
「....俺は、っ、独りで、いい....っ」
口に出してしまった言葉が胸の奥を抉る
突き刺さるように痛い
でも誰を頼る事もできない
もう誰かに迷惑かけるのも、俺のせいで誰かが傷付くのももう嫌だ
頼む
悠、歩
俺に関わらないでくれ
独りでいいから
——独りでいいから
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