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田舎から上京し、渋谷区の美大に通い始めてから早四ヶ月が過ぎた。
コンクリートジャングルの都会であるこの地では、七月はまさに汗も止まらぬ程日に日に暑さが増していく。
実家の涼しさが恋しくなってくる。
「…課題4つとか…まじで洒落にならねぇんだけど…。」
学内にある学食で、向かい合わせで座りながら”真野 遥歩”と、同じ選択教科を取っている友人の”芦川 京”はラーメンをすすっていた。
芦川は二限目に配布されたプリントを眺め、眉間に皺を寄せている。
「風景画、水彩画、人物スケッチ、ノート15ページに製図作成…だっけ?そんなに難しくないし、別に良くないか?」
遥歩は思った事をそのまま口に出し、煮卵を齧った。
「そういう問題じゃなくて、量の話だよ。ただでさえ大学生より休み少ないのに、こんなんやってたら折角の夏休みも楽しめないだろ!今年は免許取ろうと思って合宿代も稼いできたのに!」
そう言いながら、芦川は後頭部を盛大に掻く。
「大丈夫だよ。最悪、一夜漬けで何とかなるでしょ。」
「ならねぇよ!!お馬鹿さんかお前は!」
「俺の実家は山とか川とかばっかだし、風景画には困らないかなぁ。」
「…遥歩、実家帰んの?」
再び麺を啜っていた芦川は、予想外と言った感じに顔を上げた。
「え?うん、帰るよ。長期休みの日はさすがにな。」
「こっちでやってるバイトはどうすんだよ?駅前のカフェの。」
芦川の言う通り、遥歩は渋谷駅の近くにあるカフェでアルバイトをしている。
美大に入って一ヶ月程経ってからそこでバイトをしているので、そろそろ働き始めてから二ヶ月経つ頃だ。
主に若者に人気の店で、結構小洒落ているカフェである。
「うち、休みとか融通効くからさ。バイト勢も多いし。店長に話したら快く良いって言ってくれて、二週間くらい休暇貰った。」
「二週間!?じゃあ何、お前二週間も実家で夏休み過ごすの?」
「え?何かおかしい?」
「いやいやだって…お前んとこすげぇ田舎って言ってたじゃん。つまり何もねぇって事だろ?退屈じゃねぇの?」
ご最もなことに、遥歩の実家は山梨で、しかも県の中でもダントツで何も無いど田舎なのだ。
さっきも言ったが、本当に山と川と田畑しかないような土地で…猪が出るくらいには田舎だ。
コンビニもなければスーパーもなく、あるのは神社とだだっ広い公園くらい。
……だけど…。
「退屈なわけないだろ?何てったって実家には……俺の愛してやまない虎鉄が待ってるんだから!」
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