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「嫌ワレテタ……嫌ワレテ…嫌……嫌…ィ…。」
ラーメンを食べ終え、食堂を後にした遥歩と芦川は、次の授業がある第3美術室に向かっていた。
…が、芦川の横を力なくふらふら歩いている遥歩にとって、授業どころではないようだった。
「お、おい遥歩!ちゃんと歩けよ!元気なくし過ぎだろ!」
「アハハ…俺…嫌ワレテタンダ……芦川…俺、嫌ワレテタンダヨ…ワロスー…。」
「あーはいはい悪かったよ!余計な事言っちまった俺が悪かった!だからそのロボットみたいな喋り方やめろ!」
芦川に言われた事が余程ショックだったのか、遥歩の目には全く光がなかった。
…そうか…俺、虎鉄に嫌われてたのか…。
…よく考えれば、何で今までその事に気が付かなかったんだろう。
…いや…だって、噛まれたって逃げられたって、きっと遊んでいるだけなんだとずっと思ってたから…。
…母さんも、すぐに懐いてくるわよ、なんて言ってたし…。
…でも…虎鉄を飼い始めてから10年も経った…。
…10年……。
「…全治2ヶ月の怪我って、甘嚙みのうちに入る?」
「入るわけねぇだろどんな甘嚙みだよ。」
◎
「つーかさ、それって、お前がちょっと虎鉄君に対してしつこいからなんじゃねぇの?」
第3美術室に着いた二人は、いつも座っている窓側の席に着席した。
室内は、絵の具や薄ら石膏の匂いがする。
他の生徒も後からぞろぞろと入って来て、全席の半分以上が埋まった。
授業が始まるまで、あと10分ある。
「…しつこい?」
「んー、よくわかんねぇけど…お前が虎鉄君の話をしている様子を見ていたらさ、溺愛し過ぎなんじゃないかって思ったんだよ。犬然り、猫然り、生き物ってだいだいしつこいの嫌いだろ?」
「…しつこい……かぁ…。」
またしても遥歩のテンションが下がってしまった事に気が付き、芦川は少し焦った。
「い、いやわかんねぇよ!?俺は虎鉄君じゃねぇし、わかんねぇけど!」
「…。」
芦川は、正直何故自分がこんなにも必死にならなければいけないのか謎に思っていた。
…な、何なんだ?
この彼女にフラれそうになってる駄目彼氏を慰めてやっているような状況は…!
…つか、なんで今までこいつの周りにいた奴は教えてやらなかったんだ?
その犬に嫌われてんじゃねぇの的な事を…。
「……まぁ、ほら。明日から夏休みなんだし…楽しみにしてたんだろ?会うの。」
「…うん。」
「だったら、元気だせよ。よく言うだろ?元気のない飼い主を、犬は心配するって。」
「………芦川ぁ…。」
芦川の言葉に感動したのか、ずっと俯いていた遥歩は涙目になりながら顔を上げた。
…何か、俺良い事言った感じになってるけど…遥歩の心を切り裂いたの、俺なんだよな…。
「…俺、明日ちょっと高めのドッグフード買ってく!そんで、実家着いたら虎鉄にそれ食わせる!」
「お…おう!そうしろそうしろ!」
…めんどくせぇなぁ、こいつ。
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