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「…母さん…。」
「何?」
「……今…何つった…?」
背後に立っている奈緒子に対して、遥歩は酷く低い声でそう尋ねた。
「? …あぁ、虎鉄の事?そうなのよ!実は昨日突然人間の姿になっちゃって…びっくりでしょ?どんなふうにして変わったのかとか理由はわからないんだけど…。」
「……母さん…。」
「本当は電話でこの事言おうと思ってたんだけど、電車がきたって言ってあんた電話切っちゃったから。」
「……ちょい待って母さん…。」
「最初は驚いたけど、虎鉄ったらこんなに色男で 「母さんッ!!」
奈緒子の言葉を遮り、遥歩は大声を張り上げた。
驚きのあまり、男も奈緒子も目を見開く。
「…ちょっと…まじで何言ってんのかわからないんだけど……え?何…この人が虎鉄…?母さん、どうしちゃったんだよ。急にそんなメルヘンチックな事言うなよ!確かに母さんは俺と似て天然の塊みたいな人間だけどそこまでじゃないだろ?!ちゃんと!ほらちゃんとさ、説明してくれよ 「だから、今奈緒子が話しただろ。」
「…っ。」
訳の分からない事を言う奈緒子に、混乱しながらも食ってかかった遥歩に対して、赤茶髪の男が低く唸るように口を開いた。
「…いや…今の話信じろっていうの…?わかってる?あんた今うちの母親から犬って言われてんだぞ?!おかいしだろ?!なぁ、母さんもさ!そろそろこの人誰なのか教えてよ!何か知らないけど俺の服着てるし…あ、あと虎鉄!虎鉄どこにいんの?俺、昨日奮発して東京で結構高めのドッグフード買って…───」
「っ…何だよッッ!!!!」
「!?」
拳を握り締め、俯きながら遥歩の話を黙って聞いていた男は…突然声を張り上げた。
思わず、遥歩は喉に言葉が引っ掛かる。
あまりにも…。
…あまりにも、男の顔が…悲しそうだったから。
「……あんなに…っ……あんなに好き好き言ってたくせにっ……せっかく……。」
「…。」
…なんだ…?
…また、さっきと同じ顔…。
…訳が分からない…。
…分からない…けど…。
…何だか……俺は今…。
…もしかしたら、すごく…やっちゃいけないことを…してしまったのか…?
「……ろ…す……。」
「えっ…。」
何か小さな声で呟いた男の言葉が聞き取れず、遥歩は恐る恐る聞き返した。
すると…まるで獣のような表情をした男は、気のせいか…少し涙目になりながら顔を上げた。
…そして───
「…ぶっ殺す…ッ!!」
「い゛っ!?!?」
男は物騒な事を口走ると、突如遥歩の腕を掴み、信じられないことに…なんとそのままその腕に勢いよく噛み付いたのだ。
噛み付かれた箇所に、鋭い歯が食い込む。
遥歩は突然の激痛に、何が何だか理解出来ずにいた。
「ちょっ!いいいでででででっ!!!!な、何すんだ!!」
盛大に痛がる遥歩を見て、ようやく噛み付くのをやめた男は、そのまま猛スピードで家の外へ出て行ってしまった。
そんな様子を見ていた奈緒子は、あらあらと口に手を当てる。
遥歩は腕の痛みが激し過ぎ、その場に崩れて悶え始めた。
「なっ、何なんだよぉ…!!」
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