アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
「い、いやあの…ぼ…わ、私、お金持ってないんで」
「ふはっ!何言ってるの、別に金巻き上げようとかいうんじゃないよ-?」
「俺らと遊んで欲しーだけ!」
「で、でも、友達と来てるので、困ります…」
「だーいじょぶだって!ちょっとだけだから!ね?」
「オネ―さん可愛いからさぁ、仲良くしたいの~」
「わっ!ちょ、ちょっと…!」
強引に腕を捕まれて、そのまま引っ張られる。抵抗するけど力の差は歴然で、僕の意思に関係なく廊下を歩かされた。
「ほ、ほんとにっやだっ」
「堅いこといわないでさ~、どうせ男慣れしてんだろ?」
なんとかグっと引き止まった僕に、少し怒ったような様子で男の内の一人がそう言ってきた。
そしてそのまま壁に押しつけられて、スカートから出ていた太ももをスルリと撫でられる。
「あんまり抵抗すると怖い目にあっちゃうよ?」
ゾワゾワッと気持ちの悪い感覚が、太ももから背筋にかけて這い上がった。恭哉くんにされた時は少しの恥ずかしさとくすぐったさしかなかったけど、今はただただ気持ち悪くてしょうがない。
「おいおい、部屋の外ではまずいだろ~」
「君も早く中に入りたいよね?」
もう二人がそういって、僕の腰を抱いて連れて行く。僕は気持ち悪さから固まって動けなくて、もう何の抵抗もできないでいた。
やだ…やだ…!誰か、助けて……。
彼らの部屋の前までたどり着いて、一人がドアを開ける。そのままグイっと中に押し込められそうになったとき。
「おい」
誰かが男の腕を掴んで、なんとか僕は助かった。
その低い声は聞き慣れたもので、でもいつもよりもかなりトーンが落ちていた。
「き、恭哉くん…!」
「あ?なんだお前」
「邪魔してんじゃねーよ」
怖いもの知らずの三人は、今にもキレそうな恭哉くんの顔を前にしても、怯まずにそう口答えする。
恭哉君、顔が綺麗だから怒った顔に迫力があるなぁ。
さっきまで怖くて気持ち悪くて泣きそうだったのに、恭哉君が来てくれた安心感からか、そんなどうでもいいことを考えていた。
「邪魔なのはお前らだ。失せろ」
そう言って僕を引き寄せると、恭哉君は鋭い目で三人を睨んだ。
さすがにその表情には恐怖を感じたのか、チッなんて舌打ちをしながら三人とも大人しく部屋に戻っていく。
「~~~っ」
ヘナヘナと思わず力が抜けそうになる僕を、しっかりと恭哉君は支えてくれた。恭哉君が来てくれていなかったら、今頃どうなっていたんだろう。
「す、すいませっ…こわ、かった…」
「謝ることじゃないだろ。もう大丈夫だから」
そう言って優しく僕の頭を撫でてくれる手は、大きくて温かかった。柄にもなくその優しさに泣きたくなって、恭哉君にすり寄ってしまう。
そんな僕をいやがることもなく、恭哉君は優しく抱きしめてくれた。
しばらくの間そうしてくれていて、震えが止まって、少しずつ心が落ち着いてくる。
「…ぼ、僕のこと…完全に女の子、だと、思ってましたよね…?」
「…だな」
最初はカツアゲをされるのかと思ったけど、あの僕を見る目つきや脚の撫で方。男が女を見る、ねっとりした嫌なものだった。
こんな女装の似合ってないイマイチな奴に手を出すなんて、よっぽど彼らは飢えていたんだろう。
まるであの時みたいで、鳥肌が止まらなかった。三人の僕への目線は、あの人を彷彿とさせてしょうがなかった。
「…き、恭哉くんはなんでここに…?」
「…悠里が出てったから、怒ったかと思って追いかけてみた」
「別に怒ってないですよ。ちょっと笑いすぎだけど」
「ごめん。でも来て良かった」
悠里のこと、助けられて良かった。そういって恭哉君は、僕のことを抱きしめる腕の力を強めた。
「…ありがとう。おかげで、助かりました。ほんとうにこわかったから」
「…悠里の女装姿は可愛いけど、危なっかしいからあんまりしちゃだめ」
「別に、こんな機会でもないとしないですよ」
おかしなことを言う恭哉君に、思わずクスクスと笑ってしまう。別に僕の趣味が女装でもあるまいし、バレンタインのイベントが終わればもう二度とすることも無いと思う。
だけど、恭哉君がそんな風に言ってくれたことが嬉しかった。
なんとなくあったかいような、少しむず痒いような、そんな幸せな空気が流れて、思わず二人して黙り込む。
こうしていると、まるで恭哉君と恋人になったみたいだと思った。
恭哉君、付き合ったら、きっと良い彼氏なんだろうなぁ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 102