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禍 1
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――翌日
いつもより三十分早く起きて、身支度を調える。顔が見えるようにして学校に行くのは初めてだから、少しだけ緊張した。
僕は髪の毛の量が多いから、余計にモサモサした印象を与えるんだと思う。それをどうにかするには髪の毛を切りに行くしかないんだけど、昨日の今日じゃそれは不可能だった。
とりあえず、家でたまに使っていた黒のヘアゴムで、髪の毛を半分アップにする。
寝癖がついていた前髪も、ちゃんと濡らしてドライヤーで乾かして、まっすぐに整えた。それを斜めに垂らして、顔を全開にする。
鏡に映った僕は、昨日の変質者っぽい雰囲気はなくて、ただの男子高校生だった。
「行ってきまーす」
ただの自意識過剰なんだろうけど、通学路でも、学校の門をくぐってからも、人に見られている気がしてしょうが無い。
どちらかといえば、昨日までの変質者スタイルの方が人の視線を集めるだろうに。
それにしても顔がスースーするな…。
「おっは~」
「おはよ」
スリッパに履き替えてから廊下を歩いていると、バシっと肩を叩かれて、びっくりして後ろを振り返る。そこにいたのはミチルくんと恭哉君だった。
「お、おはようございます…!珍しいですね、こんな朝早くから」
「まぁ、たまにはね~ん」
「今日は俺らも教室行くから」
どういった風の吹き回しだろうか。いつもサボってばかりのみんななのに、今日はちゃんと授業を受けるらしい。
でも、助かった。一人だと緊張してしょうがなかったけど、二人がいてくれるとかなり安心だ。
教室の前について、一際身体が硬くなる。大丈夫、いつも通りに行けばいいだけだから。
深呼吸して、ガラっとドアを開けた。
最初は特にみんな興味を示さなかったけど、だんだんとうるさくなっていく。
「…え、誰?また転校生?」
「ていうかメチャクチャ綺麗じゃね?」
「あの二人と連んでるし…何者だよ」
「桐谷君と高畑君が来てるー!珍しい!」
「久々に顔見られたーやばい嬉しい!」
うぅ…目立ってる。視線が刺さっていたいけど、なんとか平常心を保って席に着いた。
ミチル君も恭哉君も座って、僕の方を半笑いで見てる。
「めっちゃ目だってんな~お前」
「こ、ここまでとは…予想外です…」
「…あれって篠宮君の席だよね?」
「え、あれ篠宮なの?」
「いや、さすがに無いでしょ。二人と仲良いからあの席取ったんじゃ無い?」
「憐れ篠宮…」
「お前の席ねぇから!!ってやつ?」
「ックク…好き放題言われてんな…」
「ま、まさか僕本人だって認識してもらえないとは思ってもいませんでした」
「だってお前髪あげたら別人じゃん」
「そ、そんなに変わりますか…?」
「髪関係なく悠里は可愛い」
「…最近恭哉が悠里ファンな気がする」
クラスのみんなは、誰一人として僕が篠宮悠里だということを分かっていないらしかった。
お前の席ねぇからって…某有名少女漫画じゃん。
そもそも、ミチル君と恭哉君の二人が来ただけでも、教室は浮き足立っているのだ。その二人と一緒にいる僕が目立たないわけなかった。
教室はうるさくなる一方だ。
「おいお前らー!何を朝から騒いどるんだ!」
まだHRの時間じゃ無いけど、あまりのうるささに、生活指導の先生が見回りにやってきた。この人は声も大きいし身体も大きくて、威圧感がすごいらしい。こわくて有名な先生だった。
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