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「ていうか、なんでみんなそんなに頭良いんですか?!授業録に出てないのに…」
毎日真面目に6時間、きっちり受けている僕よりみんなの方が頭が良いなんて、神様は不公平だ。
「俺は元々、本読むのが好きだから」
「…じゃあ、俺も元々ナンプレとか好きだし?」
「じゃあじゃあ俺は銀魂大好きだし〜?」
「…じゃあ俺は、昔虫とか好きでよく捕まえてたから?」
「そんなの勉強ができる理由になるんですか…」
たしかにみんなの得意分野に一応関係はしているけど、そんなので勉強ができるんだったら僕だってできるはずだ。
…と思ったけど、嘘かもしれない。
小説は以ての外、漫画も読まないし、数字は見ていると頭痛くなるし、銀魂も読んでも見てもないし、虫は大の苦手だ。
色んなことに興味を持つって、大切なことなのかも。
僕はなんて空っぽな人間なんだろう。
みんなには趣味とか、好きなことやりたいことがあるけど、僕は?
今の僕に、何があるの?
ただ毎日なんとなく学校に行って、なんとなく授業を受けて、なんとなく生きてる。
そんな毎日に意味があるのかな。
暗い考えが頭を占領しそうになったけど、今はみんなといるんだからそんなことを考えたくなくて頭を振った。
「俺らってさ〜自分で言うのもなんだけど態度最悪じゃん?学校からの評価もクソだし」
「わかってるなら直しましょうよ」
そうなんだけどね〜、なんて言ってミチルくんは曖昧に笑う。
「だから、成績くらい良くないとどうしようもないでしょ〜?」
「…なんで、みんなは授業に出ないんですか」
踏み込んで良いのか、分からない問題だった。でも前から気になって、気になって、しょうがなかったんだ。
こうやって、不真面目にして、毎日に教室に来ないで音楽室で集う意味がなんなのか。
みんなは別に、そこら辺のチンピラみたいな人種じゃはい。大切な所は分かってるし、人のことをきちんと考えられる人だから。
だから、余計に気になって仕方がなかった。
そこまで社会に対して反抗する意味はなんなのか。
だけど、問いかけても返事は返って来なかった。しばらく沈黙が続いて、戯けたようにミチルくんが口を開く。
「……俺ら社会不適合者だからさ〜」
ケタケタとピエロみたいに笑うけど、目は据わっていた。
やっぱり何か、あったのかな。でもそれは、僕には話す気はない。そういうことなのかな。
僕にだってみんなに言ってないことなんか山ほどある。こんな風に聞かれて答えられる自信だってない。
だけど今、有耶無耶に誤魔化して欲しくなかった。
僕って、なんて自分勝手なんだろう。こんなだとみんなに嫌われちゃうかな。
「…悠里も、ここの治安の悪さは身に染みて分かってるでしょ?」
紫乃くんが、ボソッと呟くように言った。その顔は俯いていて、表情が見えない。
たしかに、外から引っ越してきた僕にとってこの街は、まるで知らない土地みたいだった。
ここは、国を超えてしまったかというほど荒れた所なのだ。
ヤクザの数は日本で一番多いし、夜の繁華街なんて一人で歩けたものじゃない。未成年飲酒も、喫煙も、ドラッグも、全国一の数字が出てる。
そこら辺を歩いている学生だって、妙に喧嘩早いし、外見だって校則をガン無視したものばっかり。
僕が昔いた所は、髪はもちろん黒、眉毛だって剃っちゃいけないし、髪は必ず結ぶこと、スカートは膝下、挙げればキリがない程ルールだらけだった。
この学校はまだマシな方だ。
「環境のせいにするつもりはないけど。でも、こういうところで育ってきたんだよ、俺ら」
まるで僕は紫乃くん達とは違う、って言われてるみたいだった。僕だけ、また除け者だ。
僕はただみんなが好きなだけ。それを分かって欲しくて紫乃くんを見つめるけど、こちらを見てはくれない。
「…別に、僕はただ、何かあってこういう風になったのかなって」
「何もないよ。こういう風にって何?こういう風になったのは、俺たちがガキなせいだ」
「ちが、そんな意味じゃなくて」
「自分が好き勝手して周りに合わせる気は無くて、でもみんなの辛辣な視線には被害者面して、大人が嫌いだって反抗する。それが俺らだよ」
「…紫乃」
「悠里だってみんなと一緒なんでしょ?結局は俺らのこと見下して、邪魔な奴だって、要らないって思ってる」
「違う、ごめん、みんなのことそんな風に思ってるわけじゃない!ただみんなのこと知りたくて、」
「そういうのやめてよ」
やっと合った視線は、とっても冷たかった。紫乃くんの両目が、蔑むように僕に焦点を合わせていた。
「ハッキリ言えば?俺らみたいな野郎は社会のゴミだって。無駄な気遣いとか要らないから」
「………」
「紫乃、一旦落ち着け」
そんなこと、思ってない。紫乃くんも、みんなも、僕にとって大切な人だ。そう言いたかったのに、喉が痞えて言葉が出てこなかった。
あれほど合わせて欲しいと思っていた目線が、今は逸らされなくて苦しい。
「そういうの、偽善って言うんだよ」
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