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生涯に一度も無くていいと思った女装での外出は実に二度目だった。最近みんなの着せ替え人形になった気分だ。
みんなは制服なのに、僕だけ私服でなんだか落ち着かない。…いや、このワンピースは僕の私服ではないんだけども。
街に出てきたのはいいものの、特にすることもなくみんなでブラブラと歩き回る。たまに洋服屋さんに入ったり、本屋さんに入ったり。
「あ、たこやき!!食べよ!!」
小柄なのに食いしん坊の紫乃くんが、屋台のたこやき屋さんを見つけて走っていった。
「いらっしゃい!」
「えっとー、三つください!」
ちょうど二人で一つ、半分こにするつもりらしい。愛想のいいおじちゃんが笑顔で応えてたこやきをクルクル回し始めた。
「えらいベッピンさん連れてるねぇ!こんな綺麗な姉ちゃん初めて見たわ!」
「でしょでしょー!自慢の友達!」
「お前さんらもすげえ綺麗な顔しとるでね!芸能人かなんかかと思ったわ」
「おっちゃんったら口が上手いなぁー」
「ほんとほんと!イイもん見せてもらったお礼に千円でいいぞ!」
「えっほんと!おっちゃん太っ腹ー!」
初めて会った人なのに、こんなにテンポよく会話する紫乃くんはすごいな。おじさんの人柄もあるんだろうけど。
そしてやっぱり、綺麗な人は得するらしい。多分僕は唯一の女の子(に見える)だから、一番に褒めてくれたんだろう。お世辞でも嬉しい…いや、可愛いと言われて喜んでいいかは分からないけど。
でも、紫乃くんたちはお世辞なしで本当に綺麗なのだ。芸能人と言われても普通に頷けるくらいに。きっと夏祭りとかでも、いっぱいオマケしてもらったことあるんだろうな。
おじさんから袋を受け取って、近くにあったベンチに腰掛ける。焼きたてほくほくのたこやきを開けると、湯気がたっていた。
「んん〜うまっ」
はふはふと息を吹きかけて、たこやきを丸ごと小さな口に入れた紫乃くん。よくあの大きいのが一口でいけたな。ていうより熱くないの?
「あっちい!お前よくこんなの丸呑みできんな!」
「のんでないから!噛んでるから!」
ミチルくんと藤くんも半分こして食べ始めたから、恭哉くんの持ってるやつを半分もらおう。
猫舌ってわけではないけど、そんなに熱いの大丈夫かな…。
「悠里」
あっちいあっちい、なんていってベロを冷やしている那智くんに気を取られていると、恭哉くんが半分に割って冷ましたたこやきを差し出していた。
「ん」
「い、いただきます」
これっていわゆるあーん、だよね…。恥ずかしいけど、恭哉くんは特に意識もしてないのだろう。その証拠に、頬を赤くしているのは僕だけだ。
「おいひいれす」
熱さもちょうどよくて、ベロを火傷することもなかった。外はカリッと、中はふわっとしていて、小腹が空いた僕の体に染みる。
「そうか」
少しだけ頬を緩めた恭哉くんも、たこやきを食べ始めた。…なんか、ものを食べてる恭哉くんて可愛いな。体は大きいけど、小動物みたい。それかナマケモノとか。
おじさんがまけてくれたたこやきをみんなで完食して、また通りを歩き始めた。
「あ、プリクラ撮ろうよ!!」
ゲームセンターの入口、プリクラコーナーありますというポップを見つけて、またもや紫乃くんがぴょんぴょんと跳ねるように向かっていく。
プリクラ…初めてだ。どんな顔をしたらいいのかも、どんなポーズをしたらいいのかもよく分からないけど、なんだか高校生ぽくて嬉しい。
いざ、初挑戦!!!
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