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それから、那智くんが提案したいくつかのポーズを練習させられたんだけど、どうしても上手くなりきれていないらしい。
「もうちょい自然にやれ。ぎこちなさすぎるわ」
「そ、そんなこと言われても…僕小悪魔じゃないですし…」
「じゃあ、お前が小悪魔と思う人間いるか?そいつを思い浮かべながらやってみろ」
「…恭哉くん?」
「んでだよ、確かに恭哉は人誑しだけど小悪魔じゃない」
えぇ…ほとんど同じようなもんじゃん…。
「こういうのは紫乃ちゃんの得意分野でしょうよ〜」
ミチルさんがそう言うと、楽しげに紫乃くんが歩いてきて僕の腕をとる。そのまま腕を組まれて、下から顔を覗き込まれた。
少し下がった眉毛と、上目遣いしてくる大きな目に思わずゴクン、と息を飲む。死ぬ程かわいい…。
ジだと僕を見つめたまま何も言わない紫乃くんに耐えられなくなって、上擦った声で問いかけた。
「どっ、どうしました?」
「あんまりにも那智たちがスパルタだから心配になっちゃって…。大丈夫?」
「いっ、いや、全然!このくらい!大丈夫です!」
ダメだちゃんと目を見れない。心配そうな、元気のなさそうな顔をされて庇護欲が刺激される。
窓の外に目をそらしてなんとかこの状況に耐えていると、組まれていた腕が離されて、両手で手を握られた。
「無理しちゃダメだからね…?」
コテン、ほんの少しだけ首を傾けて、さらに顔を近づけてきた紫乃くんに僕はもうメロメロだった。
「は、は、はひっ!」
「と、まぁこんなわけよ〜」
「………え?」
「俺って可愛い子ぶるのだけは得意だからね」
「え?」
「こんな感じを想像してやれ!」
つまるところ今のは全部演技だったと…!!!!紫乃くんにメロメロで溶けきっていた思考が一瞬で凍った。
小悪魔か…恐ろしい世界だ…。
世の中の厳しさを思い知らされた僕は、それから無心で小悪魔というものになりきった。
その甲斐あってか、暗くなる頃には那智くんも納得してくれて、その日の練習は終了になったのだった。
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