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今日、初めて桐谷くんたちと接して、分かったことが一つ。きっと彼らは、俗にいう"不良"というやつだ。
今日のような喧嘩は日常的なことであって、大して驚くようなことでもなくて。
転入する時に、この学校には不良の集団があるって聞いた。他の学校と争いごとが絶えなくて、すごく恐ろしい奴らだって。
きっとその話は、桐谷くんたちのことだったんだと思う。まあ、少し間違っているけど。
だって彼らは恐ろしくなんかない。気さくで、子供っぽいところもあって、友達を大切に思ってる。
唯一、高畑くんのあの視線は気掛かりだけど、それでも僕はまたみんなと遊びたいって思った。
また明日も、あの音楽室に行きたい。
「桐谷君」
呼んでみたけれど、返事はない。そりゃそうだ、風の音で声はかき消されるだろうし、何より僕はフルフェイスのヘルメットを被っているのだから。
聞こえていないのなら、いいか。
「僕、また明日も、みんなと一緒にいたいです…」
腰に回した腕の力を少しだけ強めた。
桐谷君は、優しい。ほら、だって今も僕が怖がらないように、緩いスピードで走ってくれている。
運転だって丁寧で、さっきと違って風が気持ちいいと思えた。バイクって、楽しいものなんだなあ。
そんな桐谷君だから、もし僕が一緒にいたいなんて言えば断らないんだと思う。たとえ本当は嫌だったとしても。
そんなことさせたくないもんなあ。
でも、桐谷君たちが僕といたっていいことなんて何もない。高畑くんたちを助けに行った時みたく足手纏いになるのがオチで、せいぜいできるのはシュークリームを買ってくることくらい。
みんなも、僕と一緒で楽しいって、思っててくれてたらいいのに。
そんなわけないか。
僕は、つまらなくて、無力で何ひとつ魅力の無い人間なのだから。
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