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おまけ 1 電話
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「…!もしもし、桐谷君!篠宮悠里です!」
「…ああ。元気だな」
クスクス、電話越しに笑われて、思わず頬がカっと赤くなる。だ、だって緊張してるんだもん…。
夜、ご飯を食べてお風呂に入って、桐谷君に電話を掛けると決意して約三十分。スマートフォンを持って、第一声を何にしようかと悩んでいたら、びっくりするほど時間が経っていた。
このままじゃ埒があかないと思って、勢いのまま画面をタップしたのだった。
「篠宮は今、何してたんだ?」
恥ずかしくて黙り込んでしまった僕に、桐谷君はそう優しく問いかけてくれた。
「い、今は、お風呂も済ませて、桐谷君に電話をかけて…。後は寝るだけです!」
「早いな。まだ十時だけど」
「なんか、今日は楽しいことがいっぱいあったから疲れちゃって」
「そうか。ゆっくり休めよ」
「は、はい!桐谷君は、今、何してたんですか?」
「んー…俺も風呂入った後で、のんびりしてた」
「え、す、すいません、お邪魔しましたか…?」
「いや、邪魔じゃねぇよ。篠宮はそうやって謝りすぎ。俺にそんな気使わなくていいから」
「…す、すいません…あ。き、気をつけます」
言われたばかりなのにまた謝ってしまった。そんな僕がおかしかったのだろう、桐谷君はまた喉の奥を鳴らして笑っている。
桐谷君の声って…こんなだったっけ…。電話を通したときの独特の違和感が、僕の心拍数を上げていく。笑ったときの喉の音に、耳がジンジンと熱くなった。
「なんか、電話だとちょっと声違うな」
「あ、え…僕も今、同じこと、思ってました」
「えー。電話だと俺、どんな声してる?」
「え、っと…いつもより少し低くて、なんかドキドキします…。…って!いや!違います!今のは違います!」
「へぇ、ドキドキしてんの?」
「いや、だからその今のは違いますって、なんというか、口が勝手に…」
「ふ。篠宮はいつもより少し高く聞こえるな」
もう、桐谷君はずっと笑いっぱなしだ。僕の声が高く聞こえるのはたぶん、僕が焦りまくって声が裏返りそうだからだと思う。
「なあ、また明日も来ないか?」
「…え、音楽室にですか?」
「ああ。明日も連れてこいって那智がLINEでうるせぇ」
「えっ!相沢くんがですか!ふふ、嬉しいなあ。じゃあ、放課後行きますね」
「待ってる。じゃあ、暖かくして寝ろよ」
「はい、桐谷君も。おやすみなさい」
「おやすみ」
そう言って切られた電話に、もう少し、桐谷君の落ち着いた低い声を聞いていたかったと思った。
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