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1-7 パワフル
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のむちゃんはいつも褒めてくれるから、たまに申し訳なくなる。
僕の声は、ほんとはこんなじゃない。しゃべり方も、こんなじゃない。
僕は、ほんとの自分の声が大嫌い。だから、嘘ついてる。
「あ。そういえば、いっちーの恋のゆくえはどうなった?」
のむちゃんが話をかえると、いっちーが顔を曇らせる。
「俺?普通にフラれたー」
「うそっ!なんてこったい...。じゃあ今日は、いっちーを慰める会ということで」
「いやいや、やめて。なんか抉られる...」
「まあまあ、よいではないか」
「よくないから!」
のむちゃんといっちーの、テンポの速い会話を聞いてるのはたのしい。
僕自身がしゃべんなくてすむ、という利点をのぞいても、たのしい。
「いいの!俺は高校に賭ける!!」
「とか言うけどさ、中学とメンバーあんまり変わんないよ?」
「ほら、先輩とか先生とかいるじゃんか」
「いやいや、先生に手出さないでよお、いっちー…」
みんな、とってもパワフルだなあと、ミルクティーをかき混ぜながら思った。
恋をして、失って、
それでも前を向けることに尊敬する。
人魚姫みたいに、何かを失ってでも何かを手に入れようとする強さなんて僕にはかけらもなくて、
だから魔女は僕の声を奪ってはくれないんだろうか。
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