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2-32 身代わり
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「ひっひどいぃ…」
「ごめんなさい…。でも、たくみちゃん、可愛かったから。つい、食べたくなっちゃって、つい、食べちゃって」
「ふぇっ…”つい”って…せ、せんぱ、いは、かいちょ、すきなんでしょ、だから、しんえー、たいにいる、でしょ」
「そうだよ?」
「じゃあなんであんなこと…、ぼく、は、かいちょおの、かわり、なんですか」
僕のことが好きだといったあの人は、僕じゃない人のことを想っていた。
それに気づかずにせものの愛に浸っていたら、ある日突然そこからつまみ出されたみじめな僕。
彼からしたら、僕は想い人に声が似ているだけのにせものでしかなかったのだからしょうがないけれど。
ぬるま湯から引っ張り出された僕は、ああなんて外はつめたいところなのだろう、と思った。
だから僕は外には出ないと決めたのに、どうして外じゃないここでこんなひどいことされてるの。
「え、代わり?それはちがうよ、全然ちがう。言ったでしょう、僕は可愛いものもだいすきなの!だからたくみちゃんのことだいすきなの!」
「…かいちょの、代わりではなくて?」
「当たり前でしょ、っていうか会長の代わりだったらもうちょっとイケメン系探してくるんだけど。」
…それは確かにそうだ。
僕と響会長が同じところにカテゴライズされるはずがない。
それに歩先輩の言っていることは正直意味が分からないけど、ものすごく必死に力説するから、なんかもうどうでもよくなってきた。
少なくとも、僕は誰かの代わりではない。それだけで満足してしまう僕は、いつからかとてもハードルが低くなったのかもしれない。
「先ぱいは、会長がすきで、僕のこともすきで、ってことにしときましょう」
「うん、二人ともすき!えっちしたいって意味ですき!」
「…さいてーい」
「園田さまには突っ込まれたい!たくみちゃんには突っ込みたい!」
「つっこ?!…”倉敷”せんぱあい、やっぱり僕たち、絶交です」
「うそ!うそだから!うそじゃないけど無理やりしたりはしないから!いじわるももうしないから!」
そうだ、さっき僕にあんなことをしたのは、僕にいじわるしたかったからだと言っていた。
でも、どうしていじわるされなきゃいけないの。僕のこと、実はきらいなの?
「僕、たくみちゃんのことスカウトしたよね?べつに園田会長に興味がないなら、親衛隊に入らなくてもいいわけだけどさ、でもたくみちゃんは、親衛隊に入ったでしょ。僕のあげたスカウト権を使わずに。それってどうなの」
「どうって言われてもお…。だって、スカウト権で入るって、ずるしてるみたいで何となくいやだったんですもん。」
「…カンニングして入った子がよく言うよ」
「…?!?!なんで知って」
「だって僕、試験監督であの場にいたし?たくみちゃんは僕のことになんて気付いてなかったんだろうけど」
ふんっと、そっぽを向いた歩先ぱい。
さっきまで男の目をしていた彼は、完全に小学生の男子モードになっている気がする。全然雰囲気がちがうから、お風呂場でのことが夢だったみたいだ。
「なんかむかついてさ、ちょっとお仕置きして問い詰めてやろって思ったらあんなことに…」
「いやいやひとごとみたいにぃ…あんなことにしたのは歩先ぱいでしょお」
「だってたくみちゃん、思ったよりえっろいんだもん!興奮しちゃって」
「…僕もだてに16年ちかく生きてないんでねえ」
「…待って!何を経験してきたの?!お兄さんに教えてみ?!」
「ふふふー秘密ですぅ」
「誰――――!この子をこんなカラダにしたのは!!」
「へへ、じゃあ僕帰りますねえ、パジャマ洗って返すんでえ」
「いやいやいやいや、その恰好で寮の中うろついたら危ないからね?!」
「えー、着替えるのめんどくさいなあ…あ、じゃあ歩先ぱい、送ってくれますかぁ…?」
「~!あーもう!この小悪魔め!しょうがないな!ほら行くよ!」
なんだかんだ言って、歩先ぱいはやっぱりやさしい。
部屋まで歩いている間、何度も「ねえやっぱり泊まっていきなよ」、と歩先ぱいは言ったけれど、
どう考えても危険なので、僕はへらりと笑って無事に部屋にたどり着いたのでした。
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