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婚約
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「貴方には、空と婚約してもらいます。」
本家に呼び出されて当主に告げられたこの一言。
「え、っ……」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
当主の隣に座っている従兄弟である凌霄 空は正装に身を包み佇んでいる。
何で何も言わないんだ。
何も口を出さない彼に無性に腹が立った。
いきなりの事で、俺は拒否の一言も発することが出来なかった。
眈々と用件だけ告げた当主は、すぐに自室へと戻った。
こうなれば俺たちはお払い箱だ。
状況が上手く飲み込めていないまま、俺は夢うつつのような足取りで本家を出た。
がらりと重たげな戸を開け外に出ると、そこには空が立っていた。
何を考えているのかわからない、無表情というような何か決心づけたような面持ちをしていた。
聞きたいことはたくさんある。
言いたいこともたくさんある。
なんで了承したんだ。
なぜあの時何も言わなかったんだ。
この結婚にはどんな意味があるのか。
「……ぅ…」
言いたいことはたくさんあるのに、口からは何も出てこない。
胸に何かがつっかかって、上手く空気に触れられない。
俺は空が苦手だった。
人を惹きつける容貌に、誰にも劣らない頭脳と体力。
同じ凌霄家の子どもでも、俺とは似ても似つかなかった。
音の無い空気の中、先に言葉を発したのは空だった。
「ごめん。」
その、たった一言にはどんな意味が込められていたのか。
そう考えることは出来なかった。
空が、俺にキスを仕掛けたから。
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