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6章(4)
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リノルは地元の医者にかつぎこまれた。
鎮静剤を打たれ、目を覚ましたときはどうにか落ち着いていた。
リノルが宿の客室に置き去りにした旅行鞄は、そのまま宿で預かってくれていた。
物見高い近所の住人たちが、着替えの入ったその鞄を診療所まで届けてくれた。
しかし、いったい何があったのか、どうして死後数日たったような山羊をかかえていたのかときかれても、「自分でも何が何だかわからない」としか答えられなかった。
「あの島の連中がやっていることはわかっている」
医者が苦い顔で言った。
「違法な薬物の密造だよ。きみはその粉塵を吸い込んだか、食物に混入されていたのを知らずに口にしたかして、幻覚を見たのだろう」
「でも、ぼくが見たものが幻だというなら、これをどう説明すればいいのですか?」
リノルは手首を差し出した。何度となくきつくつかまれたり、押さえつけられたりした痕が痣になって残っていた。
「状態からして、きみはろくに食べ物も与えられないまま数日間にわたって監禁されていたのだろう」
「違う、違うんです。だって、ぼくはたしかに自分の意思であそこにいたんですから……」
「ばかを言ってはいけない。目撃した者の話によると、きみは戻ってきたとき理想の女を手に入れたとか、どうとか口走っていたそうだが――」
「あなたもぼくを狂人あつかいするのですか?」
「いいや。ただ、きみは夢をみていたというのだよ。二度とあの島へ行こうなどという気は起こさないことだ。きみはあそこで何者かに囚われ、おそらく複数の人間から繰り返し暴行を受けた。確実に言えるのはそれだけだ」
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