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7章(3)
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リノルは傷に染みるのもかまわず、長々と熱いシャワーを浴びて髪を洗った。
それから自分の寝室に戻り、ベッドに入ろうとした。
まだ明るかったが、疲れていた。
そのとき、ベッドのシーツやカバーが新しいものに替えられ、きれいに整えられているのに気づいた。
寝具は日に干したらしい匂いがした。
フレディが、リノルがいつ戻ってきてもいいようにそうしておいたのだろう。
リノルは清潔な枕カバーに顔をうずめ、毛布の下で身を丸めた。
そのときふいに、あることが思い出された。
以前から、リノルが外出して戻ってくると、いつのまにかシーツが替えられ、ベッドが整えられていることがあった。
ある時そのことでフレディに礼を言うと、微妙な表情が彼の顔をよぎったのである。
それはほんのかすかな変化に過ぎなかったが、あえて言うなら、狼狽か、うしろめたさに近い感情のように見えた。
それがなぜなのかリノルにはわからず、ただ小さな違和感だけが残り、そしてすぐに忘れてしまったのだった。
今になって再びそのことが頭に浮かんだ。
リノルの中からもう一つの声がささやきかけてきた。
――本当にばかだね、おまえは!彼が善意でしてくれたと思うなんて。あいつはただ、証拠を隠滅したんだよ……
何の証拠を?
――男のくせにそんなこともわからないのか、リノル?
だとしてもなぜ自分のじゃなくぼくのベッドで?
――気付いてるくせに!
やめろ! どうしてこんなことを考えてる?
リノルはもう一つの声を締め出すように、毛布を耳まで引き上げて目を閉じた。
うとうとしているうち、窓の外が暗くなってきた。
フレディがノックしてから細く扉を開けた。
ただそれだけのことなのに、リノルは飛び上がるほどぎょっとした。
「あ……何?」
「おまえ、何も食わないのか?」
「……うん」
フレディは扉を閉めて立ち去った。
リノルはひどく動悸がしているのに気付いた。
何を怯えてるんだ、ぼくは? なぜ彼に怯えなきゃならない?
どうかしてる!
しばらくして、フレディが戻ってきた。
リノルは毛布の下にもぐって、気付かないふりをした。
ただ、彼が食器を持っているのが音でわかった。
トレイをサイドボードに置く音がした。
フレディは「少しは食え」とだけ言って、再び出ていった。
身を起こして見ると、トレイにはクラッカーとコンソメスープ、オレンジ、ホットミルクなどがのっている。
リノルは食べられる分だけ口をつけてから、トレイを台所に戻しに行った。
フレディの姿はなかった。
シャワーを使っているのか、風呂の方で水音がする。
なぜだかリノルは、長いことぼんやりと暖炉の前に突っ立っていた。
ほとんど放心状態だった。
自分がどこにいるのかよくわからなくなった。
風呂場でしていた物音が止んで、腰にタオルを巻きつけたフレディが髪を拭きながら入ってきた。
リノルに気付いて立ち止まった。
「どうした?」
リノルは彼を見た。
フレディの身体はあいかわらず強靭さと男らしい魅力にあふれていた。
かたく引き締まった筋肉と滑らかなオリーブ色の肌に覆われており、腹立たしいほど健康そのものに見えた。
リノルはふいに、自分がひどく惨めに思えた。唐突に、心にもない言葉が口をついて出た。
「ねえ。今晩ぼくのところで寝る?」
その言葉をどうとったのか、フレディは表情を変えないまま自分の部屋へと向きを変え、静かに言った。
「ああ。後で行く」
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