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8章(1)
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リノルは体力的にはすぐに回復した。
以前と同じ穏やかな、誰にも脅かされることのない日々が流れ、人並みに眠ったり食べたりするようになり、減っていた体重も元に戻りつつあった。
彼はフレディが買ってきた灰色の仔馬をよく世話した。
ジェンナが死んだ後、あれほど新しい馬が欲しかったのに、どの馬を見ても納得できなかった、あの説明のつかない焦りの感情は、あとかたもなく消えていた。
この何の変哲もない仔馬が心から愛しく、まったく何の不満も違和感もないのだった。
以前のように、近隣の馬を往診に出かけるようにもなった。
人々は変わらずにリノルを歓迎してくれた。
リノルがしばらく家を空けていたことに気付いている者もあったが、誰も深くは詮索しなかった。
だがフレディに対して、リノルは変わった。
以前ほど無頓着でいることはもうできなかった。
どうかすると何気なく肩を叩かれただけでぎょっとしたり、脅えたように手を払いのけることもあった。
意外なことに、フレディはその変化を悪くはとらなかった。
「おまえもやっとものがわかるようになったわけだ」
と彼は言うのだった。
実際、触れ合うことはなくなったものの、リノルは前よりもフレディを気遣うようになっていた。
彼が何を考えているのか、自分に向けられた視線や表情から懸命に読み取ろうとすることもあった。
リノルは人間相手にそうすることに慣れていなかった。これまでずっと馬の表情を読んで生きてきたのだ。
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