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不可逆〔4〕#兄
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「原元。 俺はお前に感謝をしなければ
ならないのかもしれない。」
「………何だよ改まって。」
お世辞にも片付いているとは言えない男臭い部屋での食事中、目の前の友人が急に箸を置き背を正して、神妙な面持ちで口を開いた。正直、だいぶ気味が悪い。
「俺はこの数日間お前と生活して、
自分の新たな一面に気づくことが出来た。」
「…あっそ。 つかそんな事より、この飯めちゃくちゃ
不味いんだけど…。 お前どんな調理したんだよ。」
小坂の右眉がピクリと動く。一瞬だけ顔が歪んだが直ぐにまた堅い表情に戻り、そのまま話は続行された。
「俺はどうやら、自分で思っていた以上に
我慢強かったらしい。」
「…はぁ、どうでもいいから、とりあえずもっと
マシな飯ない? 正直こんなん食えたもんじゃ
っ……!?」
「ッでももう限界だ!!!」
みるみるうちに小坂の拳が震えていき、そして遂に爆発した。突如立ち上がり不満を怒りとして露わにする。予想外の展開に、文字どおり開いた口が塞がらない。
「もう、13日目だぞ!!お前がウチに居座り始めてか
ら! そんなに美味い飯が食いてーなら自慢の弟が居る
家に早く帰れ!リンゴの皮すら向けねー奴が文句なんか
言うんじゃねぇ!」
「はぁ?? ヤダよ。帰りたくねー。 」
シレッと図々しく即答で拒否をされる。怒っている自分が馬鹿馬鹿しくなった小坂は、額に手を当て力無く腰を落とし、深く長い溜息を一つ吐いた。
「…原元。お前のことだから、余程の訳があってウチに転
がり込んで来てるってのは分かる。 でもな、俺にもプ
ライベートってのは有るんだ。 明日の午後までには絶
対に出て行ってもらうからな。」
「………何でだよ。」
納得出来ないといったように不貞腐れた表現で返され、小坂は顔をしわくちゃにし、両手で髪をかき乱した。
「ぁああ””〜もう!! 彼女来るんだよ!
お前が居るとイチャイチャ出来ねーだろ!」
大したことのない呆れた理由を聞き、小馬鹿にしながら無意識に鼻を鳴らす。
「っんなの断れよ。」
「おい、ふざけんなよ? あんなにオッパイでかくて顔も
可愛い子なんて滅多に拝めねーんだよ! 俺の運命お前
に潰されて堪るか!!」
目に血走りを浮かべ、鬼の形相で力説される。その姿に憐れみを含む視線を静かに贈った。
あぁ、こいつぜってー財布にされてる。
そう確信し、後に始まる終わりの無い惚気話をどこか慰めるような顔をして全て聞き流した。
その間、ずっと考えていたのは明日の事。
確かに、このまま泊まり続けて小坂に迷惑をかける訳にはいかない。この数日間、彼にはだいぶ良くしてもらった。それに関しては本当に感謝をしている。
だが、やはり帰宅するのはどうしても気が引ける。かと言ってホテルとなると替えの衣類の調達やらが面倒だ。
残念ながら、自分には小坂しか頼れる友人はいない。
仕方ねぇ。必要な物だけ持ってまた直ぐに家を出よう。
そう結論付け、憂鬱な気持ちで翌朝を迎えた。
留守だったらいいと、心の底からそう思った。
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