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再構築〔2〕#兄
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急いで車に乗り込み、最寄駅への道を辿る。
自宅から駅までは歩いて20分程。
自転車の鍵は玄関に置いてあった。
まだ間に合う…
幸い道は混んでおらず、歩道を歩く人も少ない。
一人一人確認しながら慎重に探していく。
こいつじゃない… この人でもない…
あっという間に駅に着いた。
探していた姿は見つかっていない。
まだ家を出てから15分くらいだ。弟の歩くスピードはそんなに速くはない。
見落としたのではないかと思い、来た道を元に戻った。しかしそれでも見つからず、結局自宅のマンションの前に着いた。
ックソ!!!
ドコ行ったんだよあの野郎!!
思わず拳を助手席のシートに叩きつける。
焦りと苛立ちは増すばかり。
ハンドルに両腕を重ね、その上に額を乗せた。
この周辺には寝泊まり出来る所も暇を潰せる様な所も無い。あるのは閑静な住宅街だけだ。電車を使わなければどこへも行けない。自転車にだって乗っていないのだ。駅に向かう以外どこへ向かうというのだろうか。
頭を働かせ必死に考える。
暫くして、ある1つの予想が浮かんだ。
へそ曲がりな弟のことだ。もしかしたら最寄とは反対側の駅に行ったのかもしれない。
最後の望みにかけ、車を走らせる。
歩いて約1時間。まだ可能性は十分にあった。
人通りの少ない道が続く。
道のりの半分くらいまで来たが、まだ弟は見つからない。
カンカンカンカンカンカンーーーーーー…
遮断機の音が微かに聞こえる。
踏切の方へと向かう小さな人影が見えた。
段々と距離が縮まってゆく。
……見つけた。
弟だ。
遠目でもはっきりと分かる。
一先ず発見出来た事に安堵した。
しかし何だろうか、胸のざわめきが鳴り止まない。
遮断機は下り切っているのに、まだ少し距離があるとはいえ一向に立ち止まる気配はない。
不快な不安が募り、ふと踏切に目をやる。
死んだはずの父と母…
笑顔の2人がそこに居た。
お前まで行くのか。
俺を、本当に1人にするつもりなのか。
車にブレーキをかけ、運転席を立った。
走って弟の後を追いかける。
迫り来る電車。
自分を取り巻く全てがスローモーションの様だった。
遮断機の目の前、踏切の直前でその腕を捕える。
思いきり後ろに引き、強制的に歩みを止めさせた。
見開かれた目に半開きの口。とても驚いた様な顔。
間も置かずに左手で襟元を掴み、
右手を握り締め、頬にめがけて腕を振り抜いた。
見事に命中し、硬いもの同士がぶつかり合う感覚が
拳から徐々に伝わる。
無意識だった。
体が勝手に
動いていた。
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