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再構築〔4〕
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居慣れた空間に再び足をおろす。少し前までここにいた筈なのに、なんだかとても久しく感じる。
「お腹空いてない? 何か食べる?」
無言のままの兄に緊張し、なんとか場を解そうとキッチンへ向かう。
「要らねぇ。…そんなに腹、減ってない。」
「そっか。」
偶然目にはいった空の食器と、
無造作に捨てられた料理の残骸…。
兄の心の葛藤が伝わってきた。
どんなに怖くても許せなくても、
それ以上に自分を必要としてくれた。
確かにそれは、あくまでも”家族”としての感情であって、
自分が兄に抱いている気持ちとは大きく違う。
それでも、何とかして手に入れたい。
もう手放したくないと思ってしまう。
一度触れて、溢れてしまったのだ。
こんなに近くでお預けをくらえる程自分は忍耐強くない。
それを受け入れたのは紛れもない兄自身だ。
もうこの想いを止める必要は無い。隠す必要も無い。
いつかその気持ちを、恋としての愛情だと
勘違いしてはくれないだろうか。
未だリビングの入り口に立ったままの兄に近づき、
その冷えた頬に手を添える。
兄の瞳が小さく揺らいだ。
「兄さん、キス… してもいい?」
傷を付けないように、優しく兄に尋ねる。
少し顎を持ち上げて、なかなか赤みの引かない目元と目線を合わせてゆっくりと顔を近づけていく。
唇が触れるまであと数センチというところで、
兄が途端に顔を背けた。
「キスは、 嫌だ…。」
「…”キスは”って事は、他はしてもいいの?」
「…じゃないとお前、また消えようとするんだろ。」
「うん。……
兄さん、俺の部屋… 行こうか。 」
そう言って兄の手をひき、段ボールと家具だけが置いてある殺風景な部屋へと向かう。その途中 兄が口を開いた。
「なぁ、…お前ゲイなの?
よりによって、何で俺なんだよ。」
「俺は、多分ゲイじゃないよ。男とか女とか、兄弟だとか
関係なく、1人の人間として兄さんを愛してる。俺今ま
で、兄さんにしか恋したことないよ。」
兄からの返事は来なかった。
部屋に入り、必要な物を段ボールから取り出す。
兄をベッドに座らせ、少し力んだその体を
背後から抱き抱えるようにして自分も腰を下ろした。
「正面からだと、きっと怖いよね。
この前、酷いことしちゃったから。」
「…この体勢でも、十分怖ぇーよ。」
縮こまった肩が小さく震えている。
あんな記憶、上書きしてあげる。
「兄さん…」
遮る黒髪を退かして、
形の整った兄のその白い耳に、熱い舌をそっと絡ませた。
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