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幸せ者〔2〕
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_____ガチャ
胸を高鳴らせながらゆっくりとドアを開けていく…
「お。 終わったか。」
世間話をしていた2人の目線が 一気に自分へと集まった。
個室のなかで目にしたのは、光沢感のある少し暗めのグレースーツとチャコールグレーのベスト、薄く青みがかった白のシャツに、落ち着きのある深緑のネクタイ。そして、洗練された黒のベルトに高級感溢れるモンクストラップの黒い革靴………。
不思議な事に サイズも着心地もちょうど良い。
「うん。似合ってる。
やっぱ背高いとスーツも映えるな。」
「兄さんだって、十分身長あるでしょ。」
「嫌味か?それ。背と口ばっかデカくなりやがって。」
そんな2人のやり取りを見て 英国紳士が声を漏らす。
「っふふ。 仲がよろしいようで何よりです。
郁海(いくみ)さんも喜ばしいでしょうね。
如何ですか?どこか、気になるところは有りますか?」
その口から出た意外な名前に驚きをうける。
「いえ、全く! 凄く着心地良いです。
……あの、…父とお知り合いなんですか?」
「ええ。もう数十年の付き合いになります。
お兄様が成人なされた時も
こちらに来られましたしね。」
「え? それってどういう……」
いまいち状況が飲み込めずに固まっていると
痺れを切らした兄が面倒くさそうに口を開いた。
「俺が二十歳になった時もプレゼントされてたんだよ。
フルオーダーのスーツ。」
「え、 じゃあこれ…」
「内ポケット見てみろ。何か入ってるだろ。」
言われた通りに内ポケットに手を伸ばす。
カサッ
指先に触れたのは1通の白い封筒。
『 柏原郁海
奈美江 』
父さんと母さん………
育ての親からの手紙だった。
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