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幸せ者〔4〕
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封筒を開け、その中身を取り出す。
手にしたのは3枚の紙。父と母、それぞれからの手紙が1枚ずつと、仲の良い両親のツーショット写真1枚。2人の手には『HappyBirthday』と描かれたプレートがのった特注サイズの大きなショートケーキが持たれている。
父からの手紙には、祝いの言葉とプレゼントの作成秘話、そして今後の人生への指南が。母からの手紙には、同じく祝いの言葉と、地元の近況が綴られていた。
その手紙を兄が後ろから覗き見る。
「『お父さんと仲よくケーキ食べました。美味しかった
ぁ〜!ご馳走様。』…って、こんなデケーの2人で食っ
たのかよ!だからこんなに太るんだっつーの。」
「っはは。確かに!でもそれ母さんに言ったら、
兄さん怒られるよ?」
「分かってるよ。だから奈美江さんが居ない所で
言ってんだろうが。」
両親からの手紙の話をネタに、
2人で顔を合わせて笑いあう。
九州と東京。遠く離れているため頻繁には会えないが、こうした些細な話しの種だけで一瞬にして繋がってしまうのだから、家族とは本当に不思議なものだ。
話がひと段落し、そろそろ着替えようと個室に戻ろうとした所を兄に止められる。英国紳士に礼を言い、着てきた衣類を手に抱え、スーツを着たまま 渋々 店の外へと出た。
「ちょうど良い時間だな。」
腕にした高そうな時計を一瞥し、兄は再び車を走らせた。
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