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虚
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緩く談笑しながらコース料理に舌鼓をうち、種類を変えながらアルコールを体内に流し込んでゆく。
時が経つにつれ、徐々に兄の口数が減ってきた。あまり表立ってはいないが、確実に酔いが回ってきている証拠だ。
「兄さん、そろそろ
お酒セーブした方が良いんじゃない?」
「あぁ、そうだな。…同じ量呑んでるはずなのに
お前だけ余裕で なんかムカつく。」
「はは。 俺、お酒強いのかも。」
手を止め、緩んだ顔で 兄がじっと”こっち”を見つめる。
目線が合ったまま、こそばゆい沈黙が俺を包んだ。
「………………お、俺の顔に…なんか付いてる?」
「ん?…いや、せっかくの誕生日なのに彼女と
会わせてやれなくて悪かったなと思って。」
その言葉に、頭の中心から
凄まじい速さで 全身の熱が消えていくのを感じた。
スッと目を逸らし、手元のチーズをぼんやりと見たまま、 口角を上げて言葉を紡ぐ。
「…っふ。……何言ってんの。
家族の方が大切に決まってるでしょ。」
「そうか ……。 家族思いの良い弟だよ。お前は。」
「……… ありがとう。」
悔しかった。
所詮兄は、俺の事を ” できた弟 ” としか思っていない。
愛する兄が、急にどこか
遠くへ行ってしまった様な気がして、
残りの時間 ただひたすら、
襲い来る ” 虚無感 ” を 耐え忍んだ。
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