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虚〔5〕
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いつ寝ても良いようにと 先にシャワーを浴び、服を着替えてから、ソファに座ってテレビの電源を入れた。
しばらくして、同じ様にラフな格好をした兄が、濡れた髪を雑に拭きながらリビングに姿を現した。そのまま冷蔵庫に行き、つまみと 缶ビールを何本か手に取って隣に腰をおろす。
「ほらよ。」
兄から手渡された缶ビールの栓を開け、適当なバライティ番組を観ながらチビチビと酒を飲んでいく。相当な量を飲んでいる筈なのに、不思議と頭は冴えたままだ。
「…郁海さん、『お前が成人したら 男3人で呑みに行きた
い。』ってずっと言ってた。今度帰省する時、実現して
やらねーとな。」
「うん。…でも俺、酔っ払い2人の介抱なんて
出来ないよ?」
「2人ってどういう事だよ。いっつも泥酔すんのは
郁海さんだけだろ。」
「ふっ、ははっ! どうだろうね。」
どう考えても どんぐりの背比べなのに、自分は違うと言い張る兄が可愛らしくて、思わず笑いが噴き出た。
「やっと笑ったな。… 」
「え?」
「お前、飯食ってる途中から急に元気無くなっただろ?
俺だって、こう見えても心配してんだよ。」
「………。」
兄は全てお見通しだ。
急に気恥ずかしくなって、顔を逸らしたまま目を泳がせる。そんなぎこちない反応をする俺の頭に手を乗せ、兄が優しく語りかけてきた。
「無理に話せとは言わねーけど、何か悩んでるんだったら
いつでも聞いてやる。遠慮せずに甘えろよ?」
「うん。」
表情を緩ませ、兄の目を見てゆっくりと頷く。
もし この気持ちを伝えたら、
兄はどんな反応をするだろうか。
軽蔑、悲嘆、 それとも 憤慨?
何にせよ、兄が自分を気に掛けてくれた事が、
ただ この上なく嬉しかった。
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