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家
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「ただいまー」
夜の19時頃になると、父である椎名 高嶺(たかね)が帰ってきた。
「あなた、おかえりなさい」
「おかえりなさい」
百合子と葵は笑顔で高嶺を迎えた。
高嶺は公務員で、近くの市役所に務めている。
以前までは普通のサラリーマンだったが、さまざまな事情で、残業もなく安定している公務員に転職した。
「今日は元気みたいだな…葵も」
まずは百合子に笑顔を向けた高嶺が、今度は葵に笑顔を向ける。
だがその笑い方に、少しの違いがあることに葵だけが気づいていた。
少し探るような、悲しそうな、そんなものが、葵へ向ける笑顔には含まれている。
「家族全員揃ったことだし、食べましょうか」
「そうだな」
「僕が用意するから、父さんも母さんは座っててよ」
葵は食器の音を立てながら、3人分のお皿に3人分のカレーを盛った。
「「「いただきます」」」
少しの談笑を交えた、ひっそりとした3人の食卓。
これが椎名家のいつもの食卓だった。
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