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この日
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まだ何か言いたげな航の兄を強引に部屋から追い出した航は、葵の方へ振り返るとへらっと笑って見せた。
「ごめんな、大きい声出して」
苦笑いしながら謝る航は、いつもと何ら変わらない雰囲気を纏っている。
「いや、僕は大丈夫だけど…」
葵はそう言うものの、困惑と恐怖が入り混じった表情が、その言葉が嘘だということをはっきりと証明していた。
もちろん、航も葵の様子がおかしいということに気付いていた。
座っていた葵はともかく、立ったままでいた航はテーブルを挟んで葵の前に座り、口を開いた。
「葵はもうわかってるかもしれないけど、あれが俺の兄貴。真人(まなと)っていうんだ」
航は、葵がこれ以上混乱しないようにゆっくり話す。
「いきなりでびっくりしたよな、ごめん」
だがしかし、航のそんな言葉は葵にとってはもはやどうでもいいものでしかなかった。
そうじゃない
僕が聞きたいのは名前じゃない
そんなことはどうだっていい
どうしてあの人は僕の名前を知っていたんだろう
どうしてあの人はあんなに敵意を向けてくるんだろう
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