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いつもの朝
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「おはようございます」
「おっ相田か。珍しく早い出勤じゃねぇか」
ワックスでガチガチの髪を、鏡で整えながら、今日もデカイ声で話し掛けてくる男は、鏡越しに映った俺に、にかっと笑った。
もう整えるとこなんてないだろに
「部長が珍しく早いからじゃないですか?俺は普段通りですよ」
「あーそうか!」
ガハハハと豪快に笑って、彼は何処かへ行ってしまった。
朝からテンション高すぎなんだよ、あの人は…
自分の席に鞄を下ろして、コートと手袋を所定の位置へきちんと置く。
今日は昨日よりも、少し暖かいのか、マフラーは着けず、鞄の中へ入れて出勤した。
とは言え、まだ部長と俺しか社員がいないオフィスは、寒くて堪らない。
暖かい飲み物でも飲んで、気を紛らわそうと、給湯室へ向かう。
「おっ珈琲か?それとも紅茶か?」
「いいです、自分でやりますから…」
「そうか」
消えたと思った部長は、珈琲を煎れに給湯室に来ていた。
自分の珈琲を持って、なんだかご機嫌な彼は、つまらなそうに出ていった
「はぁ…」
めんどくさい部長が、今日は更に増してめんどくさい。
カップへ1杯分の紅茶パックを放り込み、お湯をいれる。
紅茶なんて普段は飲まないが、あの人と同じものを飲む気分にもならなかった。
「それで?」
「ん?」
席に戻って、紅茶を1口飲んでから、部長に問いかける
「それで、どうしたんですか?」
「どうしたって?」
「何かあったんですか?いつもより、うざ、じゃなくて、機嫌が良いみたいですけど…」
「分かるか!」
「まぁ…」
「そうか!!」
あんなに顔にも態度にも、「なんかあった」「聞いてくれ」って書いてあるのに、何言ってんだか。
呆れつつも、手元の書類と、パソコンに届いているメールを確認しながら、話の方向を元に戻す。
「また娘さんが賞状でも貰ったんです?」
「いいや!今回は家族の事じゃないんだよ」
「はぁ…?」
てっきり今回も溺愛し過ぎて、半分嫌われかけてる娘さんのことかと思って、話を振るのを避けていたのだが、違うとなると部長の機嫌の良さはなんだか分からない。
「実はな、これは相田にとっても嬉しいことだと俺は思ってるんだが」
「俺にとってもですか?」
「そうだ。なんとな、お前にも部下が出来るぞ!」
「ほんとですか!」
「あぁ」
バシバシと肩を叩かれて、眉を顰めるが、どうしても口元だけは緩んでしまう。
よっしゃ。
心の中でガッツポーズをしながら、部長に礼を言う。
「まっ相田が気に入るかは分からんがな」
「へっ?」
「さぁ仕事だ、仕事」
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