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塩ラーメン派
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「お待たせしました」
置かれたラーメンから、美味しそうな匂いと、熱々の湯気がたっていて、俺の食欲を掻き立てる。
「いただきます」
両手をしっかりと合わせて、筒にぎっしりと入っていた割り箸を1本抜く。
うまい
やっぱり何度食べても、この塩ラーメンは俺の胃袋を掴んで離さない。
麺とスープを啜りながら、一緒に頼んだぎょうざも頬張る。
寒さなんて忘れ始めた頃、ふと、部長の言葉が頭をよぎる。
俺が気に入らないかもしれない奴って例えばどんな奴だ?
チャラいのか?
ま、仕事出来れば問題無いし。
もしかして敬語が使えないとか?
それなら、おいおい教えていけばいいし、寧ろ教育係としては精が出る。それにウチの会社はそこまで上下関係は厳しくない。
考えてみても、まず先輩になった事がない相田にとって、好きも嫌いも実際の所どんな後輩がいいのかも、いまいちよく分かっていなかった。
「ごちそうさま」
「ありがとうございましたぁー!」
暖簾を潜って、外に出ればまた極寒。
駅までタクシーを呼ぼうか、迷っていると、目の前を誰かが勢いよく走り抜けた。
ん??
物凄い早さで視界から消えていく。
「あの男を捕まえておくれ!」
遅れて、遠くから老婆の声が聴こえてきた。
頭で考える前に体が勝手に動いていた。
ひったくりは物凄い勢いで通りを走って行くが、相田もそれなりに足の速さには自信があった。
「そのひったくり、止めてください!」
寒いなかを全速力で走る俺を、何事かと振り返る大人達は、その声で、俺の前を走る男を見る。
巻き込まれたくないのは当然で、みな同じように、端によけ、道を作る。
くそっ……。
若干三十路手前の俺を、どこまで走らせるつもりだよ。そう思いながらも徐々に近づいてきたひったくり犯。確実に距離は縮まってきていた。
あと少しっ
手を伸ばしてフードを掴もうとしたその時、今までの走りは何だったのか、凄まじい勢いでスピードをあげた男。
……うそ、だろ。
そのままの勢いで近くの路地を曲っていった。
流石ひったくりだな。と心の中で訳の分からない賞賛を送る。
だか、ここまで来といて、「やっぱり取り返せませんでした」は俺の中で収まらない。結局訳の分からない自分の意地で、ひったくりが曲っていった路地へと走った。
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