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豊富悠也 No.3
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「豊富。お前、今回頑張ったんじゃないか?」
放課後、終礼の最中に入ってきた数学担当の教師に今日受けた小テストが返される。手渡される時に褒められるのは、悠也にとってこれが初めてだ。
「まさか、カンニングとかしてねぇだろうなあ?」
「してませんよ!」
ニヤニヤと笑いながら冗談を言う教師を軽く睨みながら、自分の席に戻る。
いつだって、悠也は自力で向き合っている。今回も決して高得点ではないが、自分の成績の中では最高の点だ。
(………………)
そう、最高得点。
喜ぶべきはずなのだが。
今の悠也はそれどころではなかった。
「……つら」
思わず出た言葉の意味はそのまま。
今朝まではほんの少しの違和感だったものが、本格的な風邪になってしまったようだった。
三時限目からだんだん怪しくなっていき、昼休みは食欲はなく、昼食がとれなかった。
腕の関節が痛み、寒気が強くなってくる。
自然に重いため息が出てしまった。
「───とみ?……と……み……豊富っ」
「え!?な、に……?」
下を向いていた顔を上げると、千彰が心配そうにこちらを見ていた。
「いや、俺のは点数落ちてるなって────お前、本当に大丈夫か?朝より調子悪そうだぞ」
「ああ……うん、平気平気」
「全然そういう風に見えないけど」
無理に笑って見せたが、勘のいい千彰には誤魔化しきれなかったようだ。
「二時限目までは良かったんだけどなー。………すげぇ気持ち悪りぃし」
「あー、それ完全に風邪だな。お前、昼メシも食ってなかったろ」
そう言うと千彰は鞄の中から飴の袋を取り出し、その中の一つを悠也に投げた。
「ほら、何か食っとけ。何も食わないよりマシだろ?」
「……あんがと」
千彰の気遣ってくれた優しさは嬉しいが、今はまだ口に入れる気分じゃない。
悠也はくしゃくしゃと音の鳴るそれを、ポケットの中にそっとしまった。
「もう後は帰るだけだし。早く寮帰って寝ろよ」
「うん、そうするわ」
と返事をしたものの、本心では部屋には帰りたくなかった。
悠也の中での部屋に、軽いトラウマができてしまったようだ。
(でも、校内をうろつくってのもなー………)
そんな元気など、全くない。座っている状態すら辛いのだ。
身体は心に反して、早く横になりたいと言っている。
悠也はガンガンと脈打つ頭を抑えながら、ジッと終礼が終わるのを待った。
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