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御薬袋日向 No.4
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「ただいま」
玄関の扉が開くのと低い透き通るような声で、弘一が帰ってきたのだと分かった。
「お帰りなさーい」
台所から返事をすると、弘一はスーツ姿のままリビングのソファへ深く腰掛けた。
「今日も冷凍食品?」
「そうですよ。嫌でしたか?」
「嫌ではないけど……。日向は料理しないのかい?」
「うーん、簡単なものならたまに作りますけど……。いてくれる時は、お母さんが作ってくれるから」
好きなものが無い時は、家にある食材で自分で作ったりする。
凝った料理は作れないから、肉と野菜があれば充分だと思っている。栄養があれば、それでいいだろう。
「ふーん…、日向が作る料理、一度食べてみたいね」
「や、やめてくださいよ。あんまり味にはこだわらないから、美味しくないですって……」
自分の考えを見透かされた気がして、日向はごにょごにょと語尾を濁らせる。
本当に作らさせる前に、何か別の話題はないだろうか。
「あ、先生。今日はお母さんが帰らなくて、お父さんも随分遅くなるみたいです」
「電話があったのかい?」
「はい」
「へぇー………」
弘一は、あまり反応しなかった。というより、どこか遠くを眺めている。
確かにいつものことだから、興味が湧かない話題だったろうなと反省した。
「宿題で分からないところはあった?」
さりげなく一番聞かれたくないことを聞かれ、日向は苦笑いで返した。
「えっと……、ちょっとだけ……」
「……分かった。じゃあ、寝る前に見てあげるよ。先にお風呂もらうよ」
「はーい」
そう言って、弘一はリビングを出ていく。
今夜の夕食も二人きりかと、日向はこっそり息を吐いた。
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