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御薬袋日向 No.24
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弘一の顔を見上げると、頭を軽く撫でられた。
「それって、背が高いあの子?」
「!!」
思わず目を見開くと、弘一は図星かと笑った。
「ち、違っ……。千彰じゃなくて……!」
「へえ〜、千彰っていうんだ?」
「……っ」
「すぐ分かったよ。いつも、日向のことを呼んでる子だよね。日向もあの子といると、幸せそうな顔してる時がチラチラあったから」
致命的な失態をしてしまった自分が恨めしくて、唇を噛みしめる。
どうして、上手くいかないのだろう。
「日向はあの子が好きなの?」
「………………」
弘一に嘘など吐けないと知っているが、千彰のことは話題にしたくない。
無言で俯いていると、身体を壁へ押しつけられた。
逃げ場など無いと言われているようで、恐怖が増した。
「日向に言われても、僕はやめる気はないよ。日向がその子を諦めるなら尚更だ。僕のものになるまで、絶対に引かない」
「何で……」
そう言う弘一の瞳には光が宿ってなく、日向の頰に自然に涙が流れた。
「何で、何でそんなに…っ、こんな酷い事をするんですかっ……。何で、僕なんですか……っ」
しゃくりあげながら泣く日向の頭を、優しい手つきで撫でた。
「それは、今の日向には関係無いことだろう。君が知る必要はない。────そんなに泣かなくてもいいよ。日向は僕のものになるんだから、もう失恋するようなことはないよ」
聞いたことのない恋人にするような優しい声音で囁かれ、視界がだんだんぼやけて、頭の中がボーッとしてきた。
(そっか……、そうなんだ………)
千彰はもう、日向には関係無いのだ。
なら、こんな日向を受け入れてくれるのは、一人しかいない。
日向をこんなに汚してしまった、弘一しか……。
(どうだっていいんだ……どうだって……───)
弘一の顔が近づいてくる。
自然な動作で、目蓋を閉じる。
目の前に広がるのは、暗黒の世界────。
その世界を打ち破ったのは、聞き慣れた声だった。
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