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豊富悠也 No.30
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「……な、何だよ!お前……!」
いつまで経ってもその覚悟した痛みが訪れず、悠也はそろそろと目蓋を開ける。
すると悠也の前には、拳を振りかざそうとしている不良と、その腕を強く摑んで止めている東が立っていた。
「え、な、永瀬……?」
思わず悠也がぽつりと呟いた東の名に、不良達はどよめき始めた。
「え……、永瀬?」
「こいつ今、永瀬って言ったのかよ?」
「うわ、マジか!?んじゃ、コイツかよ!」
不良達は驚いたような、不安なような、微妙な表情を浮かべていた。
東が腕を摑んでいる不良の顔からも、表情が抜けている。
悠也は不良達が何に驚いているのか、理解出来なかった。
「………おい」
「……っ!?な、何だよ……ッ」
東の低い声に、不良はビクリと反応する。
「オメエら、俺達のことを浜島のクセにとか何とか、言ってたよな?」
「だ、だから何だよッ!テメェには関係ねえっ、俺達はコイツと話してたんだ!」
東の手を振り払って、不良はまだ腰の抜けている悠也を指さす。
「コイツ……?」
東は睨みつけるように不良を見つめ、肩を軽く押して後退りさせる。
そして指の関節をコキコキと鳴らしながら威嚇し始めた。
「コイツもクソもねえ、その話は同じ浜島高の生徒の俺にも関係がある。浜島のクセに、だと?俺にはテメエらのほうがよっぽど底辺に見えるが、俺の気のせいか?」
「んだと……!?」
不良達はギリリと歯を噛みしめながら、東を睨みつける。
だが東はその話を止めようとはしなかった。
「言っておくが、コイツがさっきお前らに言ったことは間違ってない。断言してやる。もし違う返答がきたら、そいつは人間としての底辺だ。今のお前らと同じ、どうしようもないクズだ。どんな理由があろうと、弱いものいじめってのをする奴は人間として失格だ」
「く……っ」
厳しい顔できっぱりと言い切った東に不良達は反論出来ないようだった。
「永瀬……」
こんなに凜々しい顔つきをした東を見るのは初めてだ。
正当な答えを、ここまできっぱりと言い切るなんて。
(ちょっと格好いい?なんて思ったりして……)
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