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本田さん
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「分からないことがあったら、1番近くにいる青木さんに聞くといい。青木さんは仕事が出来るし、とても優しいからね」
穏やかな口調で話す本田さんが、仕事について話してくれる。
青木さんは確かにとても優しいし、話しかけやすいし、仕事もできそうだ。
一日目なのに、こんなにも本田さんの近くにいるのは、きっと本田さんが自分にとって何か懐かしさ、安心するような懐かしさが感じられるからだと思う。
青木さんがどれだけ優しいかと話す本田さんも、とても優しいと俺は感じた。
「あ、俺そこの角でいいよ」
「えっもう終わりですか?」
「はは、終わりって何かおかしな言い方だね」
止まった車のドアを開けて、ありがとう、と出て行く背中。
縮こまっていた猫背が伸びて、くるりと振り返る。
「あ…いえ、その」
「…ん、今度呑みに行こうよ。高嶋くんさえよければ」
覗き込む本田さんの顔は一瞬、街灯が逆光になって見えなくなった。
微笑みをたたえるその口元が言葉を紡いで、僅かに引き締められる。
「いいんですか?是非行きたい、です」
うん、じゃあありがと、と手を振って歩き出す背中に、お疲れ様ですと声を掛けた。
街灯の照らす道の暗闇に、その背中がかき消されて見えなくなるまで待って、俺は自宅へと車を走らせた。
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