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53 姫への執着8
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どう思われますかって言われても……。
僕はこの世界を見たことがない。
この世界の人間ではないし……
そのことを、言ってもいいんだろうか。
しっかりと王を務めた彼の前だ。僕はこの世界の人間ではないと言ってもいいのだろうか。
姫としてこの世界で偽って生きていくと決めたからにはこのことを言ったら僕は姫じゃないことがバレないだろうか。
「ぼ……僕は」
姫ではないこと。それは言えない。僕のわがままで僕は嘘をつく。
バレないように、気づかれないように。
「僕は、この世界を見たことがないんです。」
『……どういうことだい。』
「僕は、目が見えなくて。こうやって触れた人の見えている景色は見えるんですけど、触れてなかったら見えないんです。そして聞こえないんです」
繋がれた手を持ち上げぎゅっと握りしめ下ろす。
強く握れば老人の……前王の心の声が聞こえてきた気がする。
可哀想に……
「だから、僕はこうして触れている時にしか見たことがないのでこの世界のことがわからないのです。」
ここで笑えることが出来たら心配させずに済んだのかな。固まってしまった表情筋は笑うことができなかった。
「こんな僕で、ごめんな……」
急に手を引かれビックリする間に前王の腕が僕の背中に回る。
抱きしめられている?
『 こんな、こんな小さな体でたくさん背負い込んでいるんですね。』
細く見えていた体からは想像もできないほどの力強さと大きさがあった。
この世界の人は大きいことが分かってはいたが改めて抱きしめられるとスッポリと埋まってしまった。
『 目も見えず、耳も聞こえない。それに加えて足も動かないなんて。神はなぜこんな足枷を姫につけたのでしょう。』
強く抱きしめられる腕は少し震えていて、
いつか忘れていた記憶の中の誰かと一緒だ。
必死に守ろうとする強い思い。
似ている
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『 この世界はある伝説が根源だと言われています。
姫とその姫を愛した王がこの国を作り上げたとも言われます。
この世界には魔力が存在し、強者が弱者の上に立ちこの世界を作り上げていく。ソーニョという国はその他の国に比べ強者が大半を占めその他の国6カ国の最上にあります。
私の息子も魔力を強く受け継いでしまった。そのせいで、将来を捨て、過去を捨ておうとならざる得なかったのです。
それでも、王と言う物は人の上にたち私情を挟まず先導していく物。だが、あやつは私情を挟んでしまった。
だから、国が滅びに近づいた。』
手を握りしめゆっくり伝わるように話す姿はまるで神に許しを乞う親のようだと思った。
『 姫を求め、この国は滅びに近づいた。それこそがあやつの過ち。
もう、終わりだそう思った時にあなたが現れた。うちから出る光は紛れもなく姫の証拠。よければ、姫の力を見せてくださりませんか?』
力って?姫ってそんなにも重責があったの。
僕には力もない。やはり、嘘をついて生きていくなって無理なことだったのだろうか。
「あ、あの、……僕は……僕は」
前王の前で嘘をついたんだ。現王の前でも……嘘をついたんだ。
相当重い罰が与えられるだろう。
また…………殴られるのだろうか。
また…………首を絞められるだろうか。
また………………
「『 1時間だ。帰るぞ。』」
前王の手から伝わってくる声と、自分の耳から聞こえた声にさっきまでぐるぐると回っていた思考が引き戻された。
『 もう、1時間か。…………姫。私は前王トザル-クライシス。そこのバカ息子の親で、今では魔力もほとんどありませんが、この世界では2位の魔力所持者でした。よければ、姫の名前を伺っても。』
紳士的に。かつ強引に。
僕の指先にキスを落として微笑んだ。
「僕は……ルカ。涙の歌と言う意味だそうです。」
王様にベッドから抱き上げられ視点が前王から王様に変わる。
『そうですか。とても綺麗なお名前ですね。』
あなたにお似合いです。そう言ってまた微笑んだのがわかった。
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