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55 姫への執着10
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この国の始まりは[ある伝説]からだった。
初めて聞いたはずのその[伝説]は何だか胸をわしずかみにされ揺さぶられているようなそんな感覚に陥った。
ある一家のある少年の話。
まるで自分がその少年になったような不思議な感覚がした。
『 え!えっ。る、ルカ様!ど、ど、どうかなさいましたか?』
慌てるレオさんは僕の背中をゆっくり撫で始めた。
(なんで急に慌てるの?)
なぜ、レオさんが慌てるのかがわからない。なにかあったのだろうか?
「な、……なんで………?」
『 なんでと言われましても………。………ルカ様……泣いておられます』
そう言われて目元に手を持っていくと、確かに水ぽい何かが指に触れた。
泣いてる……
どうして?自覚すると次々と涙が出てきて手を濡らす。
拭いても拭いても手では収まらないほどで止まらない。
「……ど、どうして。………っどうして……なんで……っ……っとまら……ないの」
迷惑かけたくないのに
止まれ。止まってよ。
早く止めないと……………嫌われる。
焦る気持ちとはは裏腹に涙は出ていく。
『 ………ルカ様……。』
困ってる。絶対困ってる。早く、早く。
辛い。辛い。
レオさんに人に嫌われることが辛い。
……………………それだけ?
違う。それよりも……もっと
……[姫]の気持ちが伝わったから辛い。
悲しい。
寂しい。
悔しい。
それ以上の……力が欲しい
その気持ちが伝わってきて。
その気持ちがわかるから。
辛い
『 ルカ様……。きっとおつかれだったのでしょう。お休みになられてはいかがですか?』
優しく、背中を撫でているレオさんが促すように、落ち着かせるようにそういった。
これ以上、迷惑をかけたくなくて、促されるように背中を倒す。
ゆっくりと、慎重に僕の体を横にしてくれる。
まだ、涙は止まらない。
『 さぁ、横になって、目を閉じたらもう大丈夫。』
レオさんの言う通り目を閉じる。見えてはいないけれど目を閉じると少し落ち着いた気がした。
『 このまま、お休みください。体はもう限界だったのではないでしょうか。』
そうだったのかもしれない。
急にこの世界に来て、右も左も足元さえもわからない状況の中、ラウさんに会って、ラウさんの家族に会って。体の限界を知って、目を開けると王都にいて。この国の王様に出会って、姫と呼ばれ、妻であると言われ。前王トザル様に呼ばれて、この国を知って。レオさんに会って伝説を聞いて。
何だか、心も体もいっぱい。いっぱいで少し過敏になっていたのかもしれない。
レオさんから伝わる情報が途絶えレオさんが僕から手を離したのがわかった。
何も伝わらなくなってもすぐ近くにレオさんの気配を感じる。
安心した。
独りは怖いから。
安心しながら自然と意識はレオさんの気配から眠りの中に入っていった。
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