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事務室へと戻ると見知った客人が古びたソファに我が物顔で腰掛けていた。
「おーおー。
激しいプレイですこと。」
「…なんのご用でしょうか」
一瞬嫌そうに眉を潜めすぐ何時もの仏頂面に戻りパソコン前の簡素な椅子に腰を降ろす。
事務作業だってしなくてはならない。
この客人に構ってる暇はない。
無視と決め込もうか。
「さっきの、自分がされたい事だろ。
なーんで他人にお前がしてんだよ。」
わざとらしい言い方。
「アレが俺の仕事です。」
「‘俺’ね。」
「ご用はなんでしょうか。
ないのならお引き取りください。」
「椿、昔みたいに…」
ガタンと大きな音を立てて椅子が倒れる。
音に気が付いて受付の子が飛んできた。
「どうしたんですかっ。
あ、来客中でしたか…」
「いえ、帰られるそうだからお見送りを頼めますか…。」
「いや、見送りは結構だよ。
連絡待ってるよ。
椿。」
肩を叩かれた。
相変わらず、厭味な男だ。
椿…
あの男が付けた名前。
真っ白な雪の上に首から落ちる真っ赤な花。
『お前によく似ているな。』
…よく似ている。
自分でもそう思う。
だから椿の名で生きているんだ。
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