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朝露の森
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ルイツが目を覚ますと、既に隣にはガイザックの姿はなかった。
昨夜のガイザックの乱れた姿を思い出しただけで、下肢が熱くなりそうだった。
今まで拒んでいた自分が、何にこだわっていたのかすら分からなくなりそうだった。
ルイツは、寝台から起き上がってふっと息を吐き出す。
なんだか、長い夢を見ていたような、現実感がまったくわかない。
抱いたからだの感触も、充足感もすべて現実だと認識できるのにだ。
わかったことは、ある。
確かに、今、俺はあのひとに惹かれているということ。そして、それは、憧れとかではない別のものであるということだ。
「絶望的にかなわないもんだけどな」
思わず苦笑まで浮かんでくる。
相手はそれをよしとしていないから、悪魔の棲む場所までいこうとしているのだろう。
腰をあげて寝台から降りると、散らばっている衣服を身に着ける。
起きてすぐに顔をあわすつもりはなかったのか。
疲労しているだろうに。
朝まで寝台にいられなかったガイザックのキモチを計り、どんな顔をして最初に顔をあわすべきかと思い悩んで天井を見上げた。
「お。ルイツ、おきてたかァ」
ギイッと扉が突然開いて、明るい表情のガイザックが爽やかそうな声で入ってくる。
昨日の姿は露ほども感じさせない。
「……まあ、今起きたばっかッスけど」
相手のすがすがしい様子に深く考えただけ損したかなと思い、ルイツはほとんど逆恨みのような気分でガイザックを見返した。
「くっく、流石にオツカレだったか。俺も水浴びしたくてさ、先に起きちまったけど」
ガイザックはニッと唇をあげた笑い浮かべて、つかつかと寝台近くへ歩み寄り荷物を肩にかけながら、ルイツをかえりみる。
「ばあさんが、朝飯作ってくれたから食いにいこう。オマエのお陰で体の調子が良くてさ、すぐにでも出立したくて仕方がない」
「へーへー。それは、お役にたてて光栄でございますー」
まったく様子が変わらないことに、ルイツは拗ねたような表情を浮かべて自分の荷物も引っつかんで、剣を脇に挿す。
「……ホント、感謝してんだぜ」
耳元で囁き、ちゅっと耳たぶに口付けをすると、反応をうかがうように背後から覗き込み、いたずらっぽく笑いながら、部屋を出て行くガイザックの背中に向けて、ルイツはぎりぎりと歯軋りをしながら、追いかけた。
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