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居酒屋夜鷹
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下の階で居酒屋を営んでいるとあって夕方近くから喧騒といい匂いがあたりに立ち込める。
ソファーは獣の革をなめした上質なもので、この建物の雰囲気とは合っていない。
不審に思いながらもルイツは腰を降ろして、手にしていた剣を抱えた。
ガイザックの親友を信じていないわけではないが、どこかでピリピリとした感覚に苛まれている。
「気を許せとは言わないが、作り笑いくらいしてもいいじゃない?」
シラールと名乗った男はふと笑いながらグラスをルイツに手渡した。
ルイツはそれを受け取ると、少し迷うように眺める。
王都にきたら誰も信用はできない。そう言ったのはガイザック自身である。
だが、ガイザックの親友まで不信に思うのもな。
「作り笑いとか、器用なことできないんで」
「へえ。そうか」
グラスに口をつけようとして、ルイツは一旦息をつく。
やっぱり信用するのは、なかなか難しいな。
誰も彼も信用するとかは元々できないタイプだけど。
「ガイザック、用心深いなぁ。オマエの相棒。俺の出したもんに口つけやしない」
「シラール、てめえの顔が胡散臭いからだろ?」
「そーか?まあ、歳くったしなァ」
ガイザックは出されたグラスに口をつけてガバガバ飲んでいる。
本当に大丈夫なのか。
大体、王都にずっと住んでたら長いものに巻かれるだろう。
ルイツは、ハッと笑い首を左右に振って、
「アンタが警戒薄いだけだろ」
肩をすくませて、手にしていたグラスをテーブルに置いて、ガイザックの肩をたたく。
「俺の為に全部捨ててくれた仲間を疑えねーし、もし裏切られてたとしてもそれでも構わないって思ってんだよ」
ガイザックはそう言うと、シラールの腕をグイッと掴む。
無言で見上げる表情は微かに厳しい。
「本当だぜ」
シラールの表情が少しだけ固まる。
「…………ガイザック、オマエは何でも分かっていっているのか」
「何も分かっちゃねーよ。俺は…………むかしから…………っ」
突然、ガイザックの体は力を失ったようにソファーに沈みこんだ。
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