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「聞いてよ、泉。父様がここ最近毎日のように見合い写真を持ってくるんだ。俺が何度断っても持ってくる、本当にやんなっちゃう」
部屋に戻ってきたこの男が持っていたのはヨーグルトでもフルーツでもなくシリアルだった。
ほら見ろ、やっぱりこの男の匙加減なんだ。
手元にあるそれの入った器を見て溜息をつく。
俺はシリアルが好きじゃない、ただでさえほとんど無かった食欲は完全に失せていた。
「?どうかした泉?食べないと体力が保たないよ、泉あんまり体力ないんだからその分食べなきゃ」
シリアル食ったところで体力なんて、大体この監禁部屋にいる限り体力なんてさして必要ない。
寧ろ俺が気を失うことで終わるあの行為が短くて済むんだからつけなくてもいい。
自分の美しさが最低限保てるだけの施しを受けよう。
それ以上はまるでペットだ。こんな男のペットになんて死んだってなるものか。
器に入ったシリアルをスプーンですくい一口だけ食べ、あとは手を付けずにテーブルの上に置いた。
「もういらないの?」
そう言って俺の顔を覗き込むから俺は俯いていた顔をさらに下へ沈めた。
さっさと出て行って。
別に奴の持ってくる物を無理に食べなくても何とかなるのだ。
俺が監禁されて少しした頃、この部屋に植物が置かれた。それはいつもの通り奴の気分で置かれたものだったけど、森に一年ほど住んでいた俺がよく食していた植物だった。
見た目は美しい花で実もつけるが基本的に観賞用として扱われるその植物はとても栄養価が高いのだ。
野菜を食べていなくたって、それを食べていればまあまあ補うことができるのだ。
この監禁生活において不幸中の幸いというべきか、それをこの部屋で育てていられるおかげで俺の健康は保たれている。
「さっきの話の続きになるんだけど、俺、結婚なんてしたくないんだよ。ま、次男だから子供作る必要なんてないんだけど。でもさ体裁を守るの為にしとけって。しかたないからさ、適当な女見繕って今度婚姻関係を結ぶんだけど俺は今まで通りだからね」
変なこと考えないでね、なんて楽しそうに言う男は「やば、今日も会うんだった」なんて焦ったように食器類を持って部屋を後にした。
「もうくんな」
結婚すると聞いた瞬間解放される期待に身が包まれたけど、冷静に考えてみたらそんなことありえなかった。あの男の執着がそんなに簡単に消えたら苦労しない。
仮にも王族に嫁ぐんだ、きっと身分もそれなりに高く見目麗しいお嬢様が相手なんだろう。
可哀そうに。あの男は親を黙らせるだけの為に結婚すると言った。
つまりそれだけだ。
結婚するだけ。その後は放置されるであろう名も知らぬお嬢様が不憫で仕方ない。
それでもお家にとっては王族との繋がりが出来るわけだから利害の一致は一応されることになるしお嬢様も第二王子の后様として優雅な生活が待っているのだから不幸だけではないのか。
少なくとも俺よりは。
「いつか、またあの子に」
会えるといいな、いや違う、会うんだ。
また絶対再会して名前を呼びあって一緒に暮らせたら。
その為にも耐えるんだ。
自分の両肩を抱きすくめて大きく深呼吸すると扉の錠が外される音がした。
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