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好きなんでしょ
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「あー………」
ソファに寝っ転がり、天井を見上げる。
あの時の瑞貴君、可愛かったなぁ。
触れそうになって踏みとどまった。触れて、何をしようとしたんだ。
「はぁー………」
「お姉ちゃ〜ん、お兄ちゃんため息ばっかついてるよ」
「ため息うるせぇなぁ……おい灯架、なんか悩み事でもあんの?」
気づけば、五歳年下の妹と五歳年上の姉に心配されていた。
「……別に」
「おいこら姉に対してなんだその態度いっぺんしめるか?」
「ヒッ……す、せいませんお願いだからその手引っ込めて」
「お姉ちゃん怖いから〜止めて〜!!」
(そんなに俺変かな…………)
なんだか自分が変になった気分だ。人をここまで気にかけた事は無い。
もしかして、恋。
なんて。
「なんか、お兄ちゃん恋煩いしてるみたい」
「え」
「は?お前何恋してんの?相手誰だよ」
「いや、まだよく分かんない……」
「分かんないって事はないだろ」
「だって、あっちは恋人がいるし……まず俺がその人を好きなのかも分からない」
「………」
恋愛について語った奴が何故恋愛を分かってないのか。
それはそれで阿呆だが、本当の事なのだ。
恋愛が何となく分かってるからって、自分自身がちゃんと分かっているとは限らない。
だからこそ、綾君が好きな瑞貴君を俺はどう思っているのか分からない。
「………よぉし灯架、お前にヒントをやろう」
「?」
「“好き”に定義などない。その人を思う気持ちが友達よりも重いなら恋人だ」
「っ…………」
「この言葉の意味が分かりゃ大丈夫だろ」
「姉ちゃん………」
「格言料、千円な」
タバコを吸いながら、俺が前瑞貴に言ったような言葉を吐く姉が少しだけかっこいいと思った。
後の言葉は何も聞かなかった事にしよう。
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