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排水口に詰まったドロップ・レモン味
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どろっとした空気は、カビの生えた裏路地の間を通り抜けて行く。邪なものから守るように、互いに身を寄せ合う少年2人。2人がくるまる泥のついた毛布は、その柄を判別することを許さないほど薄汚い。
ここは、ネオンの光も届かないような色町の裏路地。重く塗り籠めたる灰色の雲に、押し潰されそうになる。
2人の少年の名をハルとマナビという。
ハルは歳頃17の骨ばった背の高い少年だ。しかし、彼には同じ年頃の男にみとめられる精気がない。艶のない真っ黒な髪は、伸びるにまかせて無造作に輪ゴムでまとめている。着古した半袖のTシャツと、すっかり丈が合わないジャージからは手足がすらりと伸び、手足に残るいくつかの裂傷と火傷の跡が痛々しい。ドブネズミが走り回る路地を睨みつける目には、鍼のような鋭い光が輝いている。
もう1人の少年はマナビ、まだ12歳の幼い子どもだ。しかし、華奢な肩と小さな体は、彼を実年齢よりもぐっと幼くみせる。彼の幼さも相まって、透き通るのような雪肌と、色素の薄い髪、何より彼の醸し出す独特の哀愁は、キャンパスに描かれた天使そのものであった。そんな天使も今は、まるで化物から目をそらすようにハルに頭を押し付けて、ずっと小さく震えている。
世間は新しい一日を迎える頃であろうか。何時もなら白んでくる空をよそに、新聞が届けられ、鶏が朝一番の声をあげる。しかし今日に限っては、神秘的な朝の空も灰色の雲に覆われているのだが……
今日は雪が降るだろうか。
ハルは、廃ビルの間から覗く、大してコンクリートの壁と変わらない色の空を見上げた。まるで空から重石を乗せられたような圧迫感。おかげで太陽が全く何処にいるのか分からない。そんな朝は、2人に頗る嫌な予感を感じさせた。
「いつ帰っていたの? 」
マナビは震える唇を遠慮がちに動かした。ひっし、と縋り付いてハルから離れようとしない。ハルもハルで、先ほどの棘のような眼を随分と和らげて、マナビを撫でた。
「さっきかな 」
そう、お疲れ様、とハルはマナビの胸に己の顔を押し付けた。彼が呼吸をする度に、薄い生地のTシャツは、熱く湿った感覚をハルに伝える。今さっきまで、情事に及んでいたハルの体は、頗る敏感にそれを感知する。濁流のように押し寄せる性的で疚しい気持ちが彼を襲う。ハルはぐっと奥深くに押し込んでマナビを引き剥がした。
「お前はいい子にしていたか? 」
離れた顔は行き場がなくしてクネクネと首を動かした。どこか思い当たる節があるらしく、マナビは目を反らす。そして、
「さびしかったよぉ 」
と、ぐずってみせた。
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