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せつなれいにーside吉岡尋海
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旭との距離が今までにないぐらい近くて俺は気が気じゃなかった。
不自然に背筋が伸びる。硬直したかのように瞼に力が入った。少しでも横を見るとその瞬間、何かが壊れてしまいそうだったので必死に前を見据えていた。俺の心臓音、聞こえてたらどうしよう。
「あっ、雨止んできたな」
「そっそうだね。さっきまでのが嘘みたい」
気まずくなってきて話を振ると、ぎこちない声音で旭が言った。まだ俺は旭のほうを見れない。
「通り雨ってやつかな。台風一家ってやつかもしれねえ。家族でくるらしいから、まだまだ強くなりそうだ」
「全く意味が違う気がするけれど………」
今日の天気は意地悪だ。吹き荒れたと思ったら拍子抜けするほどおさまるし。
何がしたいんだろうなこの雨は。明るくなってきた曇天を見上げてため息をつく。天候のきまぐれのせいで旭が困るのは許せない。俺にとってはラッキーハプニングなんだけど。
「………あれ?吉岡君、肩濡れてるよ?」
突然旭が口にした言葉にぎくりとする。やんできたとはいえまだ雨は降っている。だから俺は極力旭を濡らさないように傘を傾けていた。代償として俺の肩の部分は雨に晒されている。
俺にとっちゃなんでもないことなんだが、心やさしい旭からしたらそうでもないんだろう。
できれば気づかれずに終わってほしかった。
俺なんかより旭の体のほうが大事なんだから当たり前なんだけどな。
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